共通テスト概況
2025/1/23公開
2025年度大学入学共通テスト(以下、共通テスト)は、1月18日・19日の両日に全国651会場で実施されました。
積雪による交通機関の遅延などが心配されましたが、全国的には大きなトラブルなく実施されました。
共通テスト 志願者・受験者は前年から微増
共通テストの志願者数は、495,171人と前年から3,257人増加(前年比101%)しました。7年ぶりに増加に転じたことになります。現役生志願者が増加したことが要因です。18歳人口増に加え、現役生志願率(今春高校卒業予定者における共通テスト志願者の割合)が45.5%と過去最高となったことも現役生志願者の増加につながっています。一方、既卒生志願者は前年比95%と今年も減少しました。既卒生は年々減少しており、共通テストの志願者における現役生割合は10年前の81%から今春は86%まで上昇しています<図表1>。
受験者数に目を向けると、1日目の外国語の受験者数は454,899人(4,364人増、前年比101%)、受験率は91.9%となりました。
「情報Ⅰ」は試作問題と同様の出願傾向
出題傾向をみると、新課程入試初年度とはいえ「思考力、判断力、表現力を問う」といった基本的な考え方にのっとり、「日常を意識した場面設定」「複数資料の提示」といった共通テスト特有の出題傾向は継続しています。
今回の共通テストから、新教科「情報」が追加されたほか、「国語」では近代以降の文章に実用的な文章が加わり、「数学Ⅱ,数学B,数学C」でも選択項目数が2つから3つに増加しました。
新登場の「情報Ⅰ」はおおむね試作問題と同様の出題傾向と難易度でした。初年度ということもあってか、知識を直接問う問題は少なく、設問文の説明や条件を読み取り、丁寧に考えることで正解できる問題が多かった印象です。
国語の新しい大問は試作問題の第B問に類似した問題で、国語では初めてグラフが出題され、文章読解力だけでなくグラフを読み取る力が必要となりました。
「英語(リーディング)」では、「試作問題」で出題されたようなレポートのアウトラインの作成や推敲する新形式の問題がみられました。英文を「書く」スキルをはかる狙いが感じられました。
このほか地理歴史・公民では、探究活動の場面が目立ちました。日常の事象を題材とした問題を例にとると、「数学Ⅰ,数学A」で「噴水を放物線とみなし、高さを求める問題が出題されました。
科目別平均点-「数学Ⅱ,数学B,数学C」ダウン、「国語」は10点アップ、「情報Ⅰ」は7割と高水準
<図表2>は、「自己採点集計*」参加者の平均点を集計したものです。
科目別にみると、主要教科では「英語(リーディング)」「数学Ⅰ,数学A」「国語」で平均点がアップした一方、「英語(リスニング)」「数学Ⅱ,数学B,数学C」ではダウンしました。「数学Ⅱ,数学B,数学C」は、やや難しい問題には丁寧な誘導がついており、全体として数学が得意な受験生には得点しやすい問題でしたが、得点率6~8割の層は大きく減少しました。「英語(リーディング)」では、全体で700語程度語数が減少し、取り組みやすかったことが影響しているとみています。
「国語」は近代以降の文章・古典ともに平均得点率が上昇しました。大問が1つ増えたものの、既存の問題では選択肢が四択の問題が増え、比較的解きやすかったことなどが要因とみています。
理科では、全科目で平均点がダウンしましたが、「基礎」を付した科目はわずかなダウンにとどまりました。一方の「基礎」を付さない科目の変動は大きく、特に受験者の多い「化学」で8.5点のダウンとなりました。
科目再編が行われた地理歴史・公民では、「歴史総合,世界史探究」が67.1点とやや高くなっていますが、科目間の平均点差は小幅にとどまっています。導入初年度となった「情報Ⅰ」については、平均点が70点となり、受験生にとってはかなり取り組みやすい設問だったと思われます。
* 自己採点集計:河合塾、駿台予備学校、ベネッセコーポレーションが実施した「大学入学共通テスト自己採点集計サービス」。共通テスト受験者の約9割が参加
総合型得点率、文系・理系ともに上昇
国公立大志望者を中心とする6教科8科目(1000点満点)の受験者平均点と得点率は、文系が631.1点で得点率63.1%(+2.3ポイント)、理系が643.8点で得点率64.4%(+1.2ポイント)と文理ともに上昇しました。文系の上がり幅が大きいのは、地理歴史・公民の平均点が高かったことや、前述した理科の「基礎」を付した科目の平均点ダウンが小さかったことなどが要因とみられます。
<図表3>は自己採点集計における8科目型受験者の成績分布です。昨年と比べて、文系・理系とも得点率8割以上の高得点層が大きく増加しました。6割以上8割未満の中間層も増加しており、全体に得点しやすかった様子がうかがえます。