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    公開日
  • 2023年10月10日

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早稲田大学政治経済学部 大学入試で数学を必須にした理由

数学の基礎学力を備え、政治経済に関心のある学生を選抜
世界標準の教育で世界に伍する人材を育成

この記事のポイント!
大学入学共通テストで「数学Ⅰ・数学A」を必須化
経済学だけでなく政治学でも数学を使う研究が盛んに
文理選択後も数学を学び続けることが大切

政治経済学部 教務主任(広報担当) 玉置健一郎准教授にお話をうかがいました。

政治学・経済学では数学が必要
一般選抜で共通テスト「数学Ⅰ・数学A」を必須に

早稲田大学政治経済学部では、2021年度入試から一般選抜において大学入学共通テスト(以下、共通テスト)と総合問題を課しています<表>。

共通テストでは「数学Ⅰ・数学A」を必須としていることが特徴の1つです。また、総合問題では政治・経済に関する日本語、英語の長文(図表・グラフを含む)を出題して、文章を理解する能力、内容を踏まえて自らの考えを論理的に説明する記述力を評価します。

今回の入試改革の背景には、約20年前から取り組んできた学部改革があります。

政治経済学部は2004年、政治学科と経済学科に国際政治経済学科を加え、3学科としました。同時に、世界標準の教育を行うための学部改革に着手し、教員も世界から募集して、最先端の研究者に着任していただいています。

世界標準という点では、経済学に数学が必要であることはすでに広く認知されていますが、現在は政治学においても、統計学はもちろん、計量経済学やゲーム理論など経済学の手法を用いた研究が盛んになっています。たとえば、国際紛争の研究で、歴史的資料に加えゲーム理論を使って分析するといったことです。そこで学修の効果を高めるためにも、一般選抜で数学を課すことにしました。

<表> 早稲田大学 政治経済学部 一般選抜(入試科目・配点)
表 早稲田大学政治経済学部一般選抜 出題教科・科目、配点
  • 早稲田大学 政治経済学部HP「受験生の方へ 入学試験情報」より引用。
  • 出願・受験に際しては、必ず入試要項で確認してください。

志願者の9割以上が、共通テストで「数学Ⅱ・数学B」を受験

入試科目については、経済学の教員からは、経済学で必要な微分や数列などを含む「数学Ⅱ・数学B」を入れるべきという意見もありました。しかし、政治学、経済学ともに、数学が得意でなければできない学問ではありません。そこで、「得意でなくてもよいが、数学を継続して学んできてほしい」「本学部の入試に特化した勉強をする必要はなく、標準的な勉強をしてきてほしい」というメッセージを込めて、共通テストの「数学Ⅰ・数学A」だけを必須としました。

とはいえ、「数学Ⅱ・数学B」を選択する学生が多いだろうとは見込んでいました。実際、2021年度以降の志願者のうち「数学Ⅱ・数学B」を受験した割合は90%を超えています。2023年度の経済学科入学者では、98.5%が受験しており、しかも高得点でした。

ちなみに、附属校、系属校からの政治経済学部への内部進学希望者に対しても、「数学Ⅲ」の単位を取得することを条件にしています。

また、「数学Ⅱ・数学B」の学習内容に自信がない場合は、1年次春学期の数学科目の受講を勧めるなど、フォロー体制も整えています。

総合問題では、読解力や論述力とともに、意欲を持って大学で学修するための政治・経済に対する興味・関心を評価します。たとえば2023年度入試ではイギリスのEU離脱に伴う国民投票に関する英文を出題しました。

育むのは政治学・経済学双方の素養と専門性
積み上げ型の開講科目で確実に知識を修得

より多角的な視点で諸問題を考えることができるよう、本学部では「統計学Ⅰ・Ⅱ」のほかに、経済学科目の「ミクロ経済学入門」「マクロ経済学入門」、政治学科目の「公共哲学」「政治分析入門」などを必修とし、どの学生も政治・経済両方の素養を持った上で専門的な学修を行います。

また、開講科目を「政治学」「経済学」「分析手法・方法論」など部門に分け、それぞれ「入門科目」「中級・基礎科目」「上級・専門科目」にレベル分けして、積み上げながら確実に知識を修得し、演習をしていきます。

もう1つの特徴は、日英両言語によるハイブリッド教育です。本学部では一部の科目を除き、全科目、同じ内容の授業を英語と日本語で開講しています。留学の前後に履修すればアカデミックな英語の予習や復習になりますし、日本にいながら留学の疑似体験をすることもできます。

これからの研究や大学教育では、文理を問わず、物事を分析して客観的に考える道具として、統計学などデータ分析に関する知識が求められるでしょう。ですから高校生には、その基礎となる数学というツールを手放さないでいただきたいです。数学が得意である必要はありませんが、まったくやらないとなると、自分の将来の選択肢を限定してしまう可能性があるということを理解していただきたいと思います。

また、政治学も経済学も社会を分析する学問ですが、社会というのは人の集まりですから、研究対象は非常に多岐に渡っており、さまざまな角度から幅広い研究をすることができます。社会に関心のある方は、ぜひ本学部で学んでいただきたいと思います。

本学部では今年度、入試改革による入学1期生が3年生になり、ゼミ活動も始まります。われわれも、学生の変化と活躍を楽しみにしているところです。

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