- 2024年08月26日
- (2024Guideline7・8号より)
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写真提供:東京工業大学
- この記事のポイント!
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- 1
- 目的意識と入学意欲を論理的に説明できる能力を求める
- 2
- 研究や課外活動など多くの場面で輝いている学生が多い
- 3
- 女子枠で増える女子学生をフォローする体制も構築中
記事の内容は、2024年5月の取材時点のものです。最新の入試情報は、大学のWebサイトをご覧ください。
東京科学大学に統合目前
入学者選抜は従来と大きく変わらず実施
意欲に加えて基礎学力が基準を満たす必要がある
2024年10月、現在の東京工業大学は東京医科歯科大学と統合し、東京科学大学(Science Tokyo)となる。理工学系は、総合型選抜に加えて学校推薦型選抜も実施している。井村順一理事・副学長は「志願者は、社会に出てから何がしたいのか、そのために大学で何を学びたいのかについて高い目的意識を持っている必要があります」と話し、さらに「それを論理的にきちんと説明ができる力が重要です」と両選抜が求める人材像と能力について説明する。そして「基礎学力が基準に満たない場合は、いくら意欲があっても受け入れることは難しい」と基礎学力も重視している。
こうした選抜を実施する目的として、多様な学生を集めるためには多様な評価軸が必要だという。そのうちの1つがダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進の一環として、2024年度入試から導入された女子枠だ。初年度の志願者数は予想以上に集まり、しっかりとした選抜が実施できたとのことだ。その結果、入学手続き者の女子学生比率は従来の10.7%から15.3%に増えた。こうして増えた女子学生に対して、ノーベル賞受賞者の大隅良典栄誉教授の寄付を原資にした記念奨学金に女子学生枠を新設したり、女性専用のリフレッシュスペースを設置したりするなど施策や対応も進んでいる。大隅良典記念奨学金は、月5万円が学士課程の4年間(修士課程に進学した場合は6年間)支給されるなどサポートが手厚い。井村理事・副学長は「ダイバーシティを達成するためには、入学した後に活躍していただかなくてはいけません。そのためのフォロー体制をつくっていきたい」と話す。
総合型選抜等で入学した学生だが、研究や課外活動など多くの場面で活躍している学生が多いそうだ。例えば、現東京工業大学には年間5~6名が選ばれる学生リーダーシップ賞がある。これは主査や部長として学生団体等を国内外の大会で上位に導くなどした学生に与えられる賞だ。入学者の1割程度の総合型選抜等による入学者が、この賞の受賞者の約4割を占める。また、厳しい選考を経て、B2Dスキームという2年生の後期から研究室に所属できるシステムがあるが(通常は4年生の前期から。生命理工学院のみ3年生後期)、現在の登録者49名のうち総合型選抜等による入学者が約3割を占めるなど、目標が明確な学生が多い。なお、上記のデータには、総合型選抜を実施する以前のAO入試等の入学者も含まれている。
総合型選抜等で入学した学生はGPAも高く、他の選抜での入学者と区別することなく同じ教育課程で学ぶが、生命理工学院は総合型選抜で生物の素質を求めているため、物理未履修者を個別にフォローしている。

- 2024年度入試の公表情報を基に河合塾で作成
- 2025年度入試以降、総合・推薦の全体ならびに女子枠の募集人員を拡大
総合・推薦の募集人員が約23%に
現東京工業大学の総合・推薦は2025年度入試よりさらに拡大する。女子枠も2024年度入試の58名からさらに増えて149名となる。女子枠以外の一般枠も合わせると募集人員は大学全体の約23%となり、難関国立大学としてはかなり高い比率だ。今後の更なる拡大について井村理事・副学長は「どこまで増やすかは状況を見てから次の判断をします」と話す。それというのも、書類審査や面接などによる丁寧な選抜を行うため、対応できる受験者数に限界があるためだ。実際に2024年度入試の結果を見ると、総合型選抜の第1段階選抜合格者は志願者の約3割だ。総合型選抜等が一般選抜よりも与し易いということはまったくないといえる。
なお、大学統合後の入学者選抜は、それぞれの大学が独立して実施することがすでに公表されている。現東京工業大学は東京科学大学 理工学系として入試を実施する。ただ、入学後の教育については、理工学系、医歯学系の学生全員が少人数のグループワークを行う必修科目や学士課程で医歯理工融合教育プログラムが予定されるなど、大学統合のシナジー効果が期待される取り組みが多く予定されている。
最後に井村理事・副学長は、これから大学をめざす高校生に対して「理系に進むとその先の進路が狭くなるという印象があるかもしれませんが、社会は大きく変わっています。すでにデータサイエンスや統計など理系的な素養があらゆる分野で必要とされています。理工学系の卒業生の進路は製造業に限らず広がっていて、どの職場でも理系的なセンスが求められる時代です」としたうえで「周囲に流されないで、自らが選んだ道を進んでほしい。そういうマインドセットを常に持っていてほしい」と語った。
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