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    公開日
  • 2024年08月26日
  • (2024Guideline7・8号より)

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筑波大学 学校推薦型選抜・AC入試

写真提供:筑波大学

この記事のポイント!
学校推薦型選抜は高校による学力担保と小論文で評価
総合型選抜は自ら学んで自ら考える「学ぶ力」を重視
入試改革は教育改革とセットで初めて機能する

記事の内容は、2024年5月の取材時点のものです。最新の入試情報は、大学のWebサイトをご覧ください。

筑波大学 大学入試情報Webサイト

総合型選抜・学校推薦型選抜の評価の観点として
コミュニケーションとインテグリティを重視

世界から多様かつ優秀な学生を受け入れる

筑波大学は現在、総合・推薦を含めて15種類の入試を行っている。さまざまな入試を行う理由について、加藤光保副学長は「さまざまな観点で受験生を評価し、多様な人材を受け入れるためにはいろいろな入口が必要です」と話す。筑波大学は「世界から多様で優秀な学生を受け入れ、世界で活躍できる人材を育成する」ことを教育目標の1つに掲げている。多様な観点で選ばれた学生が共に学ぶ学習環境をつくることは学生の成長にもつながる。

加藤副学長はかつて大学院で、学位申請基準として英語資格・検定試験による高い基準を設定したことがある。その際、留学生がリーダーシップを取り、皆で学ぶ環境がつくられ、日本人学生を含む全員が基準をクリアした。自信をつけた学生たちの行動は変わり、積極的に研究などに取り組み始め、それが学士課程の学生にまで波及していった。加藤副学長は「これは国際的な環境作りの例ですが、日本の高校生も、多様な観点で入試を行うことで、少しずつ特徴の違う学生が入ってきます。それが学習環境の構築に重要な役割を果たしてくれています」と話す。

加藤副学長は、総合・推薦における重要な評価の観点として、まずコミュニケーションを挙げる。多様な学生が集うからこそコミュニケーションは大切だ。さらにインテグリティ(誠実さ)が重要だという。これは単に正直であることではなく、自分の目標を社会から期待される形で進めていけるような基本姿勢や積極性を意味する。加藤副学長は「専門的な知識・技能以前に大変重要な選抜の観点です」と話す。

学校推薦型選抜による入学者の追跡調査では、一般選抜での入学者と遜色ない成績を収めているという結果が出ており、さまざまな観点で入試を行う重要性がデータでも示されている。本多正尚アドミッションセンター長も「学校推薦型選抜は、高校による学力担保に加えて、大学でも学力を測る小論文を課しています」と小論文試験によって、学力が担保されている点を挙げている。この過去問題は解答例や出題意図と共にWebサイトで公表されている。

筑波大学 学校推薦型選抜・AC入試
  • 2024年度入試の公表情報を基に河合塾で作成

優れた学生を選抜する新たな方法論の確立が必要

学校推薦型選抜のほか、総合型選抜の1つにアドミッションセンター入試(AC入試)があり、本多センター長は「問題発見・解決能力という『学力』を重視する入試です」と話す。ここでいう学力とは自ら学んで考える力、すなわち「学ぶ力」だ。第1次選考は書類審査、第2次選考は面接・口述試験が30分をかけて丁寧に実施され、共通テストは課されない。

AC入試全体のアドミッションポリシーとして、「志願者の主体的で継続的な取り組み(最近2年間、あるいはそれ以上の長期にわたるもの)から問題解決能力を評価します」とある。長期の研究や活動の成果や実績はかなりのレベルで、その中には卒業論文に匹敵するような論文を提出した受験生もいるそうだ。AC入試で入学した学生の特徴は、理系でも文系でも大学院進学率が高いこと、起業する学生が多いことなどが挙げられる。博士課程まで進む学生も多く、中には筑波大学や他大学の教員となったケースもある。ただ、提出書類について加藤副学長は、生成AIを念頭に「書類だけで合否を判定するのは難しく、長めの丁寧な面接で人物が書類に見合っているかを確認することが重要です」と話す。

今後の入試について、本多センター長は、総合型選抜は各大学・学部等によって評価の観点が異なるため、それを理解したうえで出願することの重要性を挙げ、「筑波大学では受験生の主体的で自主的な活動を求めています」と話し、出願指導の際には高校の先生方も十分に考慮してほしいと話す。また、清水諭学長特別補佐は、世界のトップレベル大学と伍すためには「単に学士課程の入試にとどまらず、大学院での研究力を視野に入れた入試が必要です」と研究大学ならではの視点を示す。

加藤副学長は、海外からの受験生と日本人受験生が一緒に受験できる入試の必要性を挙げるが、それは海外の入試形態をそのまま取り入れることではない。退学率などの教育条件が異なるからだ。加藤副学長は「優れた学生を選抜する新たな方法論の確立が必要です」としつつ、「入試改革は教育改革とセットになって、初めてうまく機能すると思います」と教育制度との整合性が重要だという。そして、今後の教育の課題として、大学に限らず、初等中等教育も含め、各教育機関が自分たちの生徒・学生がしっかりと学ぶ機会を確保する責任を果たすことが重要だと指摘した。


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