- 2024年12月2日
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写真提供:神戸大学
- この記事のポイント!
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- 1
- 合格者の活躍が周囲の学生にも良い影響を与えている
- 2
- 入学前教育には課題研究など本格的なプログラムを用意
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- みらい開拓人材育成センターで継続的に学生をサポート
なお、記事の内容は2024年10月の取材時点のもの。「志」特別選抜に関する最新情報や詳細は、神戸大学Webサイトをご覧いただきたい。
特定の分野に強い興味関心を持ち
深く探究する姿勢を貫く学生を選抜する入試方式
高い意欲・資質を持つ学生を選抜
神戸大学には総合型選抜として、大学入学共通テストを課す「総合型選抜」と、課さない「『志』特別選抜」の2種類があるが、今回はより特徴的な「『志』特別選抜」にフォーカスをあててお話を伺った。
「志」特別選抜はもともと「神戸大学からグローバルリーダーを輩出したい」という思いを持って2019年度入試からスタートし、今年の2025年度入試で7年目を迎える。神戸大学では2015年1月に文部科学省が発表した「高大接続改革実行プラン」を受けて、学力の3要素を測る入試への転換を図るため、2016年4月に大学全体で取り組む新入試を担う部門としてアドミッションセンターを設置し、入試改革を先導してきた。現在は、改組を経て「みらい開拓人材育成センター」のアドミッション部門として「志」特別選抜を推進している。
「志」特別選抜は、各分野のリーダーとなり21世紀の人類社会に貢献したい、という高い志とともに、大学の各分野に求められる資質・能力と主体性・多様性・協調性を持つ学生を選抜する。そのため、高等学校における主体的な取り組みなどを重視して評価する。第1次選抜ではアドミッション部門が作成した共通の総合問題(理系用・文系用)で学力を測るほか、書類審査、模擬講義受講とそのレポート作成がある。最終選抜は、学部・学科ごとに実施され、プレゼンテーションや小論文、面接・口頭試問などを通じて「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」に加えて「主体性・多様性・協働性」を評価する。学科によっては、模擬実習や演習、専門に近い科目の筆記試験が課されることもある。なお、この入試方式は、令和4年度(2022年度)の文部科学省「大学入学者選抜における好事例集」に選ばれている。
みらい開拓人材育成センター アドミッション部門長の浅野等先生は、「たとえば私の専門の工学部でいえば、単に正解が出せるかというよりも、課題に対して自身の考え方を示すことができるか、発想力や論理的思考力を持っているかを重要としています。自分の言葉で答えられるか、どれだけ『引き出し』を持っているかを見ます」と話す。この方式で入学した学生からは、「口頭試問は、ジャッジされているというより、楽しくディスカッションしたという感じだった」という声も聞かれるという。受験生にとっては、自分の経験や個性、強みを生かして勝負することができる入試方式といえそうだ。

- 神戸大学提供資料
入学前教育の充実と、合格者の入学後の活躍
「志」特別選抜の最終選抜合格者発表は11月末なので、入学までに4カ月ほど時間がある。その間、合格者たちには課題研究を課し、スクーリングで課題研究のポスターセッションをさせる。また1月中旬から約4週間、国語、英語、数学、理科などの集中教育を行い、一般選抜の学生と学力差が出ないようにしているという。スクーリングで顔をあわせるため、合格者同士のつながりもできるそうだ。
入学者のフォローアップもしているが、「志」特別選抜で入学した学生のGPAは全体的に平均より高い傾向にある。さらに国内外の大学院進学や、留学経験を生かした国際的な活動、コンテスト入賞、起業、資格試験の合格など、さまざまな分野で活躍する学生を輩出している。彼らの活躍は、周囲の学生にも良い影響を与えているという。
小中高から大学のシームレスな教育で博士人材を育成
神戸大学では2024年4月に「みらい開拓人材育成センター」を開設し、小学生から大学生までの一貫した探究活動支援と大学入学後の研究人材育成をめざしている。大学入学後の学生育成は各学部が主体的に行うが、学術的な連携のサポートも視野に入れた活動をしている。
このセンターでは、「志」特別選抜で入学した学生を中心にネットワークを形成し、研究活動の促進と横のつながりの強化を図る。浅野先生は「高い志を持つ学生たちに早くから研究活動に触れたり、異なる分野の人たちの考え方に触れたりする機会を提供することで、視野を広げ、リーダーとして成長してほしい。そして、周りの学生に良い刺激を与え、巻き込んでいってほしいと考えています」と語る。「志」特別選抜は、研究人材育成の入り口としての役割を担うことになるのだ。
強い意志を持つ生徒にチャレンジしてほしい
「志」特別選抜の志願者数は年々増加し、2025年度入試では募集人員68名に対して志願者が199名。平均倍率は3倍近く、中には7倍を超える学部もあり、この7年で入試方式として定着したことがわかる。浅野先生は、「『志』特別選抜を始めた頃に比べると、高等学校全体で探究活動が盛んになってきています。『志』特別選抜で求める学生像は大きくは変わりませんが、今後は高等学校までの探究活動への取り組みや成果を、さらに適切に評価する枠組みを考えていきたいと考えています」と語る。
「それぞれの学部で研究されていることに興味を持ち、それが高等学校の科目にどのように結びついているのかを考えて、どんどん深めてほしい。「志」特別選抜では、何か一つを深く知りたい、学びたいという強い意志のある人を歓迎します。この入試のために準備したことではなく、自分の興味のあることにとことん取り組んだことを評価したいと思います」(浅野先生)。

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