- 2023年10月16日
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- 社会人の活躍につながる3つの要素
- 2
- 探究学習がますます重要に
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- 低学年からの取り組みが大切
高校生時代から10年間の成長を追跡調査
河合塾は2013年度から2022年度まで、「学校と社会をつなぐ調査」(通称:10年トランジション調査)を実施しました。桐蔭学園理事長の溝上慎一先生(調査開始時は京都大学所属)との共同調査で、4万5千人を超える高校2年生を対象に、それらの生徒が大学を経て社会人3年目を迎えるまでの成長を追跡した、過去に例のない大規模な調査です。その結果をご紹介します。

社会人の活躍につながる
高校時代の「キャリア意識」「主体的な学習態度」「対話的な学び」
調査では、高校生や社会人の資質・能力(※)と、学習やキャリア意識に関する指標との関係を分析しました。その結果、高校2年生時点の(1)キャリア意識、(2)主体的な学習態度、(3)対話的な学び の3つの要素が、10年後の資質・能力に影響を与えていることがわかりました。
- 学習指導要領では、資質・能力の3つの柱(知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等)が示されています。本調査では、これらを支える資質・能力として「他者理解力」「コミュニケーション・リーダーシップ力」「計画実行力」「社会文化探究心」の4つを取り上げました。
(1)キャリア意識
調査では「二つのライフ」という指標から、キャリア意識を分析しました。この指標は、次の質問A・Bに対する回答をもとに、回答者を ①「A:見通しあり・B:理解実行」②「A:見通しあり・B:理解不実行」③「A:見通しあり・B:不理解」④「A:見通しなし」の4つに分類して得点化したものです。
- A 自分の将来についての見通しを持っているか
- B その見通しの実現に向かって、すべきことを理解しているか、それを実行しているか
高校2年生時点で、①「見通しあり・理解実行」のグループに属する人ほど、社会人3年目時点での資質・能力が高い傾向が見られました。
(2)主体的な学習態度
授業やレポート・課題へ取り組む姿勢に関する、次のような9項目に対して、それぞれどの程度当てはまるか5段階で回答したものを得点化し、資質・能力との関係を見ました。
<項目例>
- 授業には意欲的に取り組む
- 課されたレポートや課題を少しでも良いものに仕上げしようと努力する
大学までに主体的な学習態度が身についている人ほど、社会人3年目時点での資質・能力が高い傾向が見られました。
(3)対話的な学び
文章や会話、発表などを通じて、自分の考えを示したり意見を述べたりする「アクティブラーニング外化」について分析しました。この「アクティブラーニング外化」は、次の3項目を4段階で回答したものを得点化した指標です。
- 議論や発表の中で自分の考えをはっきりと示す
- 根拠をもってクラスメイトに自分の意見を言う
- クラスメイトに自分の考えをうまく伝えられる方法を考える
高校2年生時点でこれらの値が高いほど、社会人3年目時点での資質・能力が高く、所属先の企業等に適応している傾向が見られました。
探究学習がますます重要に
これらの態度や行動特性を身につけるうえで、重要な役割を持つのが、高校での「総合的な探究の時間」などを中心に行われる探究活動です。
「総合的な探究の時間」では、自己の在り方・生き方と一体的で不可分な課題を発見し、解決していくことに取り組みます。社会に参画・貢献する活動なども取り入れながら、自身がどうあるべきか、社会の一員としてどう生きていくかを考える機会を繰り返し設けて、生徒のキャリアにつなげています。
そして、探究活動の過程で、生徒は将来就きたい職業や学びたい学問を考えることはもちろん、その実現のためにやるべきことを理解し、実行していきます。
また、「主体的な学習態度」や「対話的な学び」は、教科の授業や日々の自宅学習などを通じて身についていくものです。各教科の授業でも、自分の意見をまとめたり、発表したり、生徒同士で議論したりする機会を繰り返し設ける必要があります。
低学年からの取り組みが重要
「学校と社会をつなぐ調査」では、キャリア意識 、主体的な学習態度、対話的な学びは、あるタイミングで急激に変化するわけではなく、高校から大学、大学から社会の各段階で、少しずつ変化していくことも明らかになりました。
小中高大を通じて主体的・対話的で深い学びを充実させるとともに、低学年のうちからこれらの態度や行動特性を身につけていくことが重要と言えます。
- 関連リンク
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高校・大学・社会 学びと成長のリアル
「学校と社会をつなぐ調査」10年の軌跡 -
高校2年生を10年間にわたり追跡した「学校と社会をつなぐ調査」。10年間の資質・能力の変化や、高校・大学時代の学習や態度・意識が及ぼす影響などを検証。その分析結果を教育現場で役立てていくため、さまざまな視点で専門家と議論を深めていきます。
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「探究活動」を、進路選択、大学入試、その先の社会へとつなぐためには、どうすればよいのか。探究と進路をつなぐポイントを整理し、先進校の事例を紹介しています。
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