ケンブリッジ英語検定河合塾による問題分析
学習指導要領とケンブリッジ英語検定
学習指導要領との高い親和性
「聞くこと」「読むこと」を通じて得た知識を自らの体験や考え方などと結びつけながら活用し、「話すこと」「書くこと」を通じて発信することが可能となるような出題構成となっています。さまざまな点で日本の学習指導要領との関連性をもっており、生徒の日々の英語学習の成果を測定する試験としても有効です。
高等学校学習指導要領 外国語 | ケンブリッジ英語検定 B1 Preliminary for Schools |
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第1 目標 外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,読むこと,話すこと,書くことの言語活動及びこれらを結び付けた統合的な言語活動を通して,情報や考えなどを的確に理解したり適切に表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力を次のとおり育成することをめざす。 |
ケンブリッジ英語検定 B1 Preliminaryは,聞くこと,話すこと,読むこと,書くことの4つのスキルを測るテストで,合格者は日常生活のほとんどの場面で,相手が英語母語話者であってもなくても,満足のいくコミュニケーションができます。 |
英語コミュニケーションⅠ (1)聞くこと (2)読むこと (3)話すこと[やり取り] (4)話すこと[発表] (5)書くこと 高等学校学習指導要領(一部抜粋) |
リーディングとライティング 日常の情報や記事を理解できる。身近な事柄や予測可能な事柄について手紙を書いたり,メモをとったりすることができる。 (社会生活・旅行) (学習) リスニングとスピーキング わかりやすい指示や公的な発表を理解できる。抽象的・文化的な事柄について,簡単な意見を限られた方法で述べることができる。 (社会生活・旅行) (学習) Cambridge University Press & Assessment: Handbook for Teachers(一部抜粋) |
河合塾によるケンブリッジ英語検定問題分析
これまでの学習内容を「活用する」ことが求められる出題内容
日本の学習指導要領との関連性の高さに加え、「思考力」「表現力」といった、これからの入試で求められる新たな力を測ることができる出題になっています。試験の種類によって難易度が異なりますので、受検者は学習段階に合わせて無理のない範囲で力を測定することが可能です。
サンプル問題分析 ケンブリッジ英語検定 A2 Key・B1 Preliminaryレベルの分析(2015年度実施)
- 1.学習指導要領との関連
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学習指導要領との密接な関連性が見られます。例えば、リスニング・リーディング・ライティングの出題は、学習指導要領の目標である「情報や考えなどを的確に理解したり適切に表現したり、伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力」を問うており、また、スピーキングパートは「情報や考え、気持ちなどを話して伝え合うやり取りを続けること」を促す設計になっています。すなわち、「英語コミュニケーション」、「論理・表現」の学習成果を測ることに極めて適した出題内容となっており、学校現場において効果的な学習サイクルが機能することが期待できます。
- 2.学力の3要素との関連
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新たな時代を生きる子どもたちに必要とされる「学力の3要素」を適切に測ることのできる構成となっています。各パートにおいては、語彙・文法・語法の「知識・技能」を活用しながら、情報を的確に読み取り、音声を聞いて意味を適切に理解し、英語で書く・話すという「思考力・判断力・表現力」を問う出題となっています。そして、それらの問題は、「主体性・多様性・協働性」が下支えするような関係で形成されています。
- 3.日常場面での運用能力を問う出題
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問題の大きな特長のひとつは、日常的な言語使用場面における4技能の運用能力を問うている点です。これは、「言語パフォーマンスは、現実のコミュニケーションにおいて観察され、測られるべき」とのCambridge Englishの理念を反映しています。すべてのパートにおいてこの思想が一貫しており、日常で活用できる英語をどれだけ学習したかを測ることが意図されています。こうした実用性を重視した出題は、生徒の教室での学習意欲を高めることにもつながっており、他試験に比べてもこの点は極めて優れているといえます。
- 4.技能統合的な要素
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問題形式としては、技能ごとの能力を測る形式となっており、バランスよく総合的に4技能の基礎力を測る内容となっています。一方で、受検者に無理のない範囲で、統合的に能力を測る工夫もなされています。例えば、リスニングではノートテイキング(ライティングの力)が求められ、リスニングでは聞いた内容を整理して書くという出題があります。ライティングにおいては、文章を読んで理解したうえで、書くという能力が問われています。また、スピーキングでは、聞いて話す、イラストを読み取って話すという技能統合的な能力が求められています。
- 5.出題レベルと配点
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A2 Key・B1 Preliminaryともに、日本の大学入試における英語試験では4択が主流なので、3択の試験は日本の高校生には実際よりも簡単に見えるかもしれません。B1 Preliminaryと共通テストの問題レベル比較については、分野と設問によって問題の質と難易度にばらつきがあり、また、共通テストはリーディングとリスニングの出題構成であるため、単純な比較はできません。あえて言えば、リスニングはほぼ同等レベルだと考えています。また、リーディングも、ほぼ同じと考えてよいでしょう。ライティングは、国公立大学の二次試験や一部私大入試に相当する出題も見られます。しかし、日本ではライティングの出題はまだ定着していないので、その意味では難度は高いといえます。また、スピーキングは日本の入試では一般的ではなく、本検定の問題は対話形式であるため、受検生が感じる難易度は一層高いと考えられます。概説すると、ケンブリッジ英語検定は今の共通テストより高いレベルかもしれませんが、今後、高等学校における4技能学習が定着すれば、妥当なレベルと言えるでしょう。

ケンブリッジ英語検定は、海外の検定試験なので敷居が高い、過去問題もなく対策しづらいと思われている方もいらっしゃいますが、ケンブリッジ英語検定のリーディング問題中(B1 Preliminary)の教科書初出語彙カバー率をみてみると高い数値を示しています。
そのため、日頃の学校での学習で対応できる試験内容であり、特別な対策は必要ありません。