国公立大二次試験対策
教科別の学習対策について、河合塾講師がアドバイスします。
※河合塾グループ(株)KEIアドバンス発行『栄冠めざしてSPECIAL Vol.2』(2024年10月発行)より
英語
- ❶ 長文読解問題の重視
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国公立大学二次試験の英語問題における読解力重視傾向は変わっていない。600~800語の英文が2題出題されることが多く、大きな配点を占めていると考えられる。今後もこの状況が大きく変化することはないだろう。よって、受験生が持てる力の大半を注がねばならないのが長文読解問題対策である。具体的には、実際に出題された問題を自分の力で解いてみる必要がある。そのためには、まず、英語を読むうえでの基礎となる語彙、文法、構文などの知識を備えなければならない。
設問形式としては、下線部和訳と内容説明問題が大半を占めるが、要約問題を出題する大学もあるので、志望する大学の出題傾向を事前に調べ、類似した問題を解くなどの対策を講じることが必要である。
- ❷ 長文総合問題
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対策としては、下線部和訳、空欄補充問題などを含む長文総合問題を一週間に3題解くことを目標にしてもらいたい。その際、とにかく自力で解答を作成してみることが大切である。解答後に模範解答と自分の解答を照らし合わせて、誤答がある場合はその原因を突き止めて、それを今後の学習に生かしていくこと。志望大学が決まったら、まず過去問を3年分くらいは解いてみることが必要である。
- ❸ 英作文
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この分野では、従来の下線部英訳問題から自由英作文まで、出題は多岐にわたる。後者では1)与えられたテーマに関して意見や感想を自由に書くもの、2)与えられたテーマに関して指示どおりに書くもの、3)英文または日本文を読み、その内容に関して意見を自由に書くものと様々である。このように、大学により出題形式は大きく異なるので、志望する大学の出題傾向をあらかじめ把握しておくこと。自由英作文の基本については、良質な参考書や問題集が出版されているので、1冊購入し、様々なタイプの問題について答案作成の練習を積むことが望ましい。その際、必ず答案は先生に添削してもらうこと。
- ❹ リスニング
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リスニングを課す大学を受験するなら、やはりそれなりの訓練が必要になる。まず、英語の音に慣れることが先決である。具体的な手順として、
- (1)教材を用意する。ネイティブスピーカーの自然な口調の音声が入っているCD、およびそのスクリプトも付属しているものを選ぶとよいだろう。
- (2)次に、問題を実際に聞いて解いた後もスクリプトを見ながらCDを何度も聞いて、英語の音に慣れること。
- (3)最後に、CDの音声を流しながらスクリプトを見て、できるだけCDの英語に似せて、自分でも声を出してみること。
以上の訓練法を続けると、英語の音に耳を同調させることができるようになるし、独特な英語の音とリズムを体で感じるようになる。
数学
- ❶ 知識・技能の習得
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数学はほかの教科と比べて暗記するという要素は少ないが、覚える必要がある公式や問題を解くうえで知っておかねばならない解法などはある。まずは、それらの知識・技能を早く身につけ、「忘れていた」や「知らない」をなくそう。
国公立大学の入試問題は、大問数がおおむね3~6題であり、どの分野から出題されるかはもちろんわからない。したがって、どの分野でも教科書の例題から章末問題レベルの問題は解ける状態にまで持っていき、苦手な分野をつくらないことが大切である。その状態にまで来たら、志望大学の過去問の傾向をチェックし、よく出題されている分野の応用問題に取り組むとよい。
- ❷ 計算力の強化
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入試では計算ミスは致命的なミスになり得るので、計算力の強化は必須である。計算力を身につけるには、日頃から自分で手を動かして計算するしかない。解けなかった問題があったとき、解答を目で追うだけでなく、自分で一から計算してみてきちんと答えと一致するか確認するようにしよう。とはいっても、実際のところ計算ミスをゼロにすることは難しいので、得られた答えが正しいかどうか疑う姿勢も持っておくとよい。例えば、確率の答えが1を超えていたら明らかに間違いであるし、数列の一般項anを求める問題であればn=1,2を代入してみてa1やa2と一致しなければ計算ミスに気づくことができるであろう。また、得られた答えの値が問題文の条件に対して大きすぎるのではないか? と感じればそこで計算ミスに気づくこともある。このように得られた答えが正しいかどうか一歩引いて確認してみることも大切である。
- ❸ 解答の作成力を身につける
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国公立大学の入試は、白紙の解答用紙に一から解答を作成しなくてはいけない。解答用紙のスペースは限られているので、要点をまとめて解答をコンパクトに仕上げる訓練が必要である。解答用紙に計算式の羅列は不要であるから、おおよその方針を立て計算をするのは問題用紙の余白を使い、解答用紙には要点を抽出して解答を作成するように心がけよう。
また、国公立大学の入試では、グラフや領域の図示が問われる可能性がある。日頃の学習からグラフや図をフリーハンドで描いて考えてみる習慣をつけておこう。
- ❹ 「なぜ?」という疑問を大切に
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解けなかった問題があったとき、解答を読んで理解することも大切だが、なぜ自分の解答が間違っているのかを熟考してほしい。間違っているように見えても計算ミスを正したり、不足している議論を補えば正しい解答に行き着くことはよくある。解法の糸口自体が出てこなかった場合は、なぜそのような解法を用いたのかということを意識して取り組むとよい。これらの姿勢で数学を学習していくと、初見の問題に対しても対応できるようになる。
現代文
- ❶ 読解上の注意点
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二次試験で出題される記述問題の場合、対応する箇所を文中に探し、その箇所を踏まえて解答を作成していくものであるが、その対応箇所は、傍線部前後にある場合、傍線部から離れている場合、文全体に分散している場合など、様々な場合が考えられる。傍線部前後にある場合は踏まえやすいが、離れている場合や文中に分散している場合に対応箇所が十分に踏まえられるかどうかは、ひとえに文全体の仕組みが正確に捉えられているかどうかにかかっている。文章全体の仕組みが捉えられていれば、どこを踏まえて解答を作成すればよいか、おのずとわかってくるはずである。そこで、過去問や問題集などを通して、文章全体の仕組みを正確に捉える訓練をしてほしい。
- ❷ 表現上の注意点
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記述問題では、文中の表現をそのまま使って正確でわかりやすい解答が作成できる場合と、自分なりの表現を工夫しなければそのような解答が作成できない場合とがある。特に小説や随筆の問題においては自分なりの表現で解答を作成しなければならない場合が多く、特別な訓練が必要になってくる。やはり過去問や問題集などを通して、表現力を養う訓練を積み重ねてほしい。
古文
- ❶ 古語と語法が主柱だ!
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入試問題の古文は、本文が解釈できれば、よほどの難問・奇問でない限り、どの設問もおおよそ解答できるはずである。その解釈のためには、古語と語法の力が必要であることは明白である。
ただ、だからといって、やみくもに古語を覚え、文法のドリルをやってばかりいては、実践的な力はつかない。
- ❷ 文脈のなかで押さえつつ解釈しよう!
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過去問や予想問題集などを使って、一度設問を解いた後でもよいので、本文を全文解釈することをおすすめする。その解釈作業のなかで、つまずく部分の単語や語法を押さえ、かつ主体や客体を確認し、本文全体の流れを押さえる練習を積みたい。そうした積み重ねのなかで、読解力の増強がかなうのである。
- ❸ 解答は必ず自分で書いてみること!
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過去問や予想問題を解く際に、頭のなかだけで考えて、実際に自分の答案を書かず、正解例と頭のなかの解答とを見比べるだけの人がいるが、それでは、二次試験対策としては何にもならない。必ず自分で解答を書いてみて、どこのポイントが足りなくて、何が表現的にまずいのかを検討することが重要である。
自分で確認・検討できなければ、必ず先生などからアドバイスや添削を受けるようにしたい。
漢文
- ❶ 本文はまず全体を把握すること
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二次試験の漢文の本文は易化する傾向にあるとはいえ、受験生が一度読んだだけで完璧に理解できてしまうほど平易なものではない。したがって、本文を読解する場合には功を焦らないことが大切である。まず、全文を一通り読んで趣旨や大意を把握する。次に、趣旨や大意を念頭に置きながら細部の内容を訓読に即して読み取っていく。このように全体の内容を捉えてから部分の内容を決定することを心がけて読解すれば、極端な誤読を避けられるはずである。
- ❷ 重要語・基本句形を習得すること
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語句の意味、読み、書き下し文、現代語訳などの問題では、相変わらず重要語や基本句形が多く問われている。読解練習をする際に出合ったものはぜひ覚えてしまいたいものである。読解した文章は必ず繰り返し朗読すること。知識が確実に定着するとともに、訓読力も向上するはずである。
- ❸ 解答は実際に書いてみること
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現代語訳の問題にせよ、説明問題にせよ、頭ではわかったつもりでも、いざ書いてみると、うまく表現できなかったり要領よくまとめることができなかったりするものである。解答は必ず実際に書いてみることが大切である。
物理
- ❶ 物理法則を理解しよう!
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物理の学習において大切なことは、物理用語や物理法則を理解し、使えるようになることである。
まずは教科書を読み、様々な現象の特徴を理解し、その現象を支配している物理法則の性質と成り立つ条件を知ることが大切である。そのうえで、それらの法則が成り立っている現象を考察してほしい。実験や観察をしたことがある場合はそのときの様子を思い出すとよい。力学や波動に関する法則などは、教科書などにある写真・イラストやインターネット上の実験動画を見て理解を深めるとよいだろう。
次に、法則を数式化した、いわゆる公式をしっかり覚えよう。このとき、公式を単なる文字列として無機質に暗記するのは間違いである。公式に含まれる文字はすべて物理的な意味を持っている。その意味を正確に捉えるために言語化して覚えることが大切である。言語化し、意味を確認しながら公式を用いることで、公式の使い間違いを防ぐことにつながる。
最後に、法則に関する基本的な問題を解いてみよう。法則は理解したつもりでも、実際に応用させてみると、理解が足りていなかったり、間違って理解していたりすることに気がつくものである。そのようなときは再び教科書に戻って一からやり直してみる。この繰り返しこそが最短の道であることを信じて頑張ってほしい。
- ❷ 問題演習を一つひとつ丁寧に行おう!
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典型問題や頻出問題を徹底的に解こう。演習はただ数をこなせばよいというものではない。解けなかった問題は解答を覚えてしまおうという態度は言語道断である。それぞれの問題で、与えられた状態を把握し、力学であれば着目する物体にはたらく力を考察することで、成り立つ物理法則を判断できるようにしよう。物理は一見異なる問題に見えても、同様のアプローチで解ける問題が数多くある。大切なのは、根幹となる解法を身につけ、その解法で多くの問題を解けるようにすることである。
当然、わからないことや間違いも出てくるであろう。そのときは解答をよく読み、自分の至らなかった点がどこなのかをじっくり考えてほしい。それでもわからないときは学校の先生などに質問をすることで疑問点を克服していこう。
また、計算ミスを過少評価しないでほしい。言うまでもなく、穴埋め形式の問題で計算ミスをすれば、途中の考え方がいくら合っていても0点である。計算ミスは個人によって癖があり、繰り返し同じミスをしがちなものである。間違ってしまった部分の傾向を分析し、ミスを減らす努力をしてみてほしい。
- ❸ 苦手意識をなくそう
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緊張が増す本番において、問題を見た瞬間に「これは苦手だ」と思ってしまうと、普段なら解けるはずの問題でも解けなくなってしまう。これでは試験を始める前から負けているようなものであり、それまでの苦労が水の泡になってしまう。物理は力学、熱力学、波動、電磁気、原子の分野からなるが、どの分野でも典型的な頻出問題は解けるようになっておきたい。
力学分野は、運動方程式が基本であり、そこから派生して力学的エネルギーと仕事の関係、運動量保存則を用いた解法がある。特にエネルギーを用いた解法と運動量を用いた解法の違いを正しく理解しておこう。
熱力学分野は、状態方程式と熱力学第1法則が基本であり、この2つの使い方がわかれば、解法パターンも多くはないので短期間で得点力を上げることが可能な分野である。
波動分野は、単元ごとのつながりが薄いため、個々の現象ごとに解法の選択を迷うようなことは少ない。典型的な現象の作図の仕方と数式の立て方を両立させて解くことが大切である。
電磁気分野は、電気単元では、電場・電位の理解とキルヒホッフの法則を用いた回路の解法が大切になる。磁気単元では、ファラデーの法則を用いた電磁誘導の解法が大切で、典型問題を解けるようにしよう。電磁気分野は、苦手意識を持つ受験生が多いが、取り組んでみると典型頻出問題の数は力学よりも少なく、得点源にすることができる。
原子分野は、力学、波動、電磁気の知識を総合的に扱うため、ここまで学んできた物理を違う角度から復習する意味も持つ分野である。入試では特に、光電効果、コンプトン効果、水素原子模型などが頻出となるので、これらの典型問題を確実に解けるようにするとよいだろう。
化学
- ❶ 不得意分野を克服しよう
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入試の本番で不得意分野が出題されると、大きく失点する恐れがある。また、通常であれば、比較的短時間で得点できるはずの問題で間違えてしまうと、その失点を難度の高い問題でカバーしなければならないことになってしまい、かなり不利となる。さらに、不得意分野が出題されたことによるショックのあまり、冷静さが失われ注意力が散漫になることで、得意分野でもミスをするリスクが高まる。不得意分野が残っている受験生は、早急にその分野の克服をめざそう。
- ❷ 計算問題を得意にしよう
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理論分野では、計算問題が多く出題される。また、計算問題は配点が高い場合が多く、しかも、最初の計算で間違えてしまうと、連動して大きく失点してしまうことがある。
本番での計算ミスを減らすために、平素から電卓を使わずに計算するように心がけよう。また、物質量や濃度、反応量に関する計算は多くの分野で用いるので、早いうちにまとめて演習しておくとよい。ここで、自分の計算ミスの傾向や計算の際に約分できる数値などを把握しておくとよい。早いうちに計算の速度と正確性を担保しておくと、計算問題が多く出題される分野の学習の際に、それらの分野の理解と定着にかかる時間も短縮できる。
- ❸ 有機分野を得意にしよう
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二次試験での有機分野の配点は、平均すると全体の3割から4割を占める。特に構造決定の問題は点差がつきやすく、難関大学では考える要素の多い問題が出題される傾向がある。基礎知識をきちんと身につけたうえで、様々なパターンの問題に触れておく必要がある。演習時には、時間制限を設け、スピードも意識して研鑽を積んでおこう。
また、高分子の分野に関してはパターン化した問題が多く、得点が見込める分野となっている。学習が遅れやすい分野ではあるが、できれば早い時期に一通り学習して、計算問題も含め得点力を磨いておきたい。
- ❹ 論述力をつけよう
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二次試験の特徴のひとつとして、論述形式の問題が挙げられる。論述問題の多くは、科学用語や現象が起こる理由の説明、実験結果に対する考察を問うものである。科学用語の説明は基本事項を確認していくことで対応できるが、現象が起こる理由や実験考察は、暗記のみに頼った学習では対応できない。「なぜそうなるのか」を普段から考える習慣をつけておく必要がある。
また、自力で解けなかった論述問題については、教科書や参考書を調べてもよいので、自分の解答を作成してみよう。調べてもわからなかった問題は、解答を見ても構わないが、それでも自分なりの文章で書き直してみることが重要である。なお、文章力も必要ではあるが、それ以上に重要語句(キーワード)を漏れなく列挙できるかが得点を左右する。普段からキーワードを意識して練習しておこう。
- ❺ 過去の入試問題を研究しよう
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受験する大学の過去の入試問題は、早い時期に必ず目を通しておきたい。自分の志望大学が、どの程度の学力を要求しているのかを認識できるはずである。また、学力が合格レベルに達していない場合でも、あとどの程度頑張れば合格ラインに到達するのか、という目標がはっきりする利点もある。
国公立大学では、大学により問題の傾向や解答形式が大きく異なる場合が多い。例えば、計算問題で途中の過程を記述することを求められる場合、普段から、途中過程を簡潔に記す練習をしておいた方がよい。このように、受験する大学の出題形式や傾向を一度確認しておき、普段の学習にフィードバックしていくことで、得点力で差をつけることができる。
なお、2025年度の入試は新課程となっており、過去問を利用する際に注意を要する部分がある。特に熱化学の分野では、反応熱を用いる代わりに、エンタルピーという物理量が導入され、反応によるエンタルピー変化(反応エンタルピー)を用いる形となった。このため、熱化学方程式 →エンタルピー変化を付した反応式と変更になり、エネルギー図の書き方、教科書記載の公式等に大幅な変更点がある。その他の分野でも、旧課程と新課程で語句が異なる部分もあるので以下にまとめておく。過去問演習をする際に参考にしてほしい。
旧課程 新課程 アルカリ土類金属 Be、Mgを除く2族元素
注)Be、Mgを含む場合もある2族元素
注)Be、Mgを含めない場合もある遷移元素 3~11族の元素
注)12族を含める場合もある3~12族の元素
注)12族を含めない場合もある気体→固体の状態変化 昇華
注)凝華凝華 標準状態(0℃、1.013×105Pa) 標準状態という用語を用いている 標準状態という用語を用いていない教科書もある 水酸化鉄(Ⅲ) 名称:水酸化鉄(Ⅲ)
化学式:Fe(OH)3としている名称:水酸化鉄(Ⅲ)、酸化水酸化鉄(Ⅲ)
化学式:Fe2O3・nH2O、FeO(OH)・nH2O遷移状態 活性化状態 遷移状態