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神戸大学 学習アドバイス

河合塾講師からの学習アドバイス

教科別の学習対策について、河合塾講師がアドバイスします。

※出題範囲は募集要項、大学ホームページ等で必ずご確認ください。

英語

最近の出題傾向

①大問構成
〈長文読解総合問題3題+英作文問題1題〉の大問4題構成が基本である。2020年度に大問が長文読解総合問題3題のみとなり、自由英作文が長文総合問題の設問の一部として組み込まれる形で出題されたりしたが、2021年度以降は再び従来の形に戻っている。要するに、多少のマイナーチェンジはあるものの、3つの長文読解と、本格的な和文英訳もしくは自由英作文を課せられるという基本的なフレームは踏襲され続けているといってよいだろう。
②出題分野
長文問題3題は、論説文が2題、会話を多く含む小説もしくはエッセイ(完全な対話形式の場合もある)が1題という構成が基本である。論説文のテーマは多岐にわたっており、あらゆるジャンルから出題される。例えば2023年度は、大問Ⅰの論説文が「意義ある人生のために日々大切なこと」というテーマについて書かれた人生論とでもいうべき長文、大問Ⅱの論説文が環境問題のジャンルからの出題で「水資源」というテーマについての長文、大問Ⅲの小説文がカズオ・イシグロの作品からの出題で、母と娘、そして娘の友人(問題文からはわからないが実はAIロボット)の会話の一場面を扱った長文であった。

2024年度入試予想・対策

2024年度の出題パターンの細部に関する安易な予想は危険であるが、いずれにせよ80分の制限時間内で大量の英文を読んで、記述式を含んだ多くの設問を処理する能力を要求されることには変わりないであろう。それぞれの設問に関する対策は以下のとおり。

①論説文
日頃は一文一文を正確に解釈する訓練をおこたってはいけないが、制限時間のある実際の入試においては、下線部和訳の箇所でない限り、頭のなかで「上手な訳」をしながら読んでいく時間的余裕はない。センテンスの内容を瞬時に捉えながら読み進んでいく練習も積む必要がある。ただしその際、センテンス同士の論理関係、パラグラフ同士の論理関係を理解することが大切。日頃から論説文を読むときに、漫然と英文を訳すだけでなく、論旨を頭のなかで整理しながら読んでいく「論理的速読」の練習が必要である。
②小説または対話文
小説では「いつ、どこで、誰が、なにを、どうして、どのように」という5W1Hを具体的に思い浮かべながら読んでいくことが基本。日頃から物語文を読むときに、場面設定・登場人物の人間関係・心情などを考えながら読んでいく「想像する速読」の練習が必要。対話文の場合は、論点と、それぞれの発言者の立場を押さえながら読んでいくことが重要である。
③和訳
英文の正確な構造分析に基づき、文脈をヒントにしてなるべく自然な訳語を選択する練習を積んでいこう。常に品詞、文型、修飾関係、構文などを意識して英文を観察する姿勢が大切。
④説明
説明問題の解答のヒントは必ず本文中にある。下線部の前後の文脈を精読して、論理的に該当箇所に迫ろう。解答は発見できても設問の条件に沿って最終的な答案をまとめる段階でのミスが多いので、書くことを惜しまず答案作成の練習を十分に積んでほしい。
⑤英作文
神戸大学は近年自由英作文の出題頻度が増しているが、和文英訳ができない受験生は、きちんとした自由英作文も書けない。また2021年度の後期のように、和文英訳が実際に出題されたりもする。まず文法的に正しい英語を書く練習をすること。それには文法の学習も不可欠。さらに、日本語表現のとおりに英訳するのが困難で、意訳しなければならない場合は、常に文脈に最大限の注意を払い、できる限り元の問題文から意味がずれないよう注意すること。
⑥自由英作文
自由英作文には様々な形式があるが、どの形式が出題されても慌てないように対策を立てることが大切。答案の内容・表現は「自由」だが、答案が第三者に理解できるように「論理的な文章」を書くという基本は外せない。日頃から先生に答案を見てもらうことが効果的である。

文系数学

最近の出題傾向

●実力差が現れる入試
80分で3題の出題形式が定着している。2018年度以降、標準的な難易度の問題が出題されており、受験生にとって取り組みやすい設定にはされているが、2018年度は微分法、数列、指数・対数の融合問題、2019年度は数列、整数の融合問題で高度な論証力を求められた。また、2020年度は場合の数の問題で題意を読み取る力を求められ、2021年度は複素数と数列の融合問題、不等式の証明、測量に関する問題で論理力および応用力を求められた。2022・2023年度は全体的に取り組みやすい出題だったので、試験時間内に効率よく点数を稼ぐ力を求められた。
●整数が頻出
整数との融合問題がよく出題されており、2021年度には複素数と数列、2022年度は指数・対数、2023年度は図形と方程式の分野と絡めた問題が出題された。ほかにも、微分法・積分法、場合の数・確率も頻出分野なので注意したい。

2024年度入試予想・対策

①入試予想
●微分法・積分法を得点源に
微分法・積分法、場合の数・確率に関する問題の出題が予想されるが、このなかでも微分法・積分法は典型問題が出題されることが多く、学習量が直接点数に跳ね返ってくるので、ぜひ得点源にしよう。場合の数・確率は工夫されている問題が多く、思考力が試されるので、過去問を使って研究しておくとよい。また、図形問題もよく出題されるので、図形やグラフ・座標に関する問題およびベクトルの問題などを中心に幅広く対策しておきたい。
●整数問題・論証問題に注意
整数との融合問題が過去に何度も出題されているので注意したい。高度な内容に手を出す必要はないが、基本的な整数の扱いはきちんと頭に入れておいてほしい。2022年度は整数と指数・対数、2023年度は整数と図形と方程式の融合問題が出題されたが、ほかにも整数は数列との相性がよいので、今後出題される可能性がある。また、必ず論証の設問が出題されるので、数学的帰納法・背理法を用いた証明や不等式の証明に関してもしっかりと学習しておきたい。
②対策
●まずは基本事項の徹底理解
特殊な解法が必要な問題はほとんど出題されておらず、教科書で基本をしっかりと身につけ、その後、良質な入試問題を幅広く演習していけばよい。ただ、漫然と演習を重ねるだけでは思考力の必要な論証や場合の数・確率の問題には対処が難しいかもしれない。ここ数年、融合問題も続けて出題されている。そのような問題に対処するために、どんな問題を解くときも方針から式変形に至るまでしっかりと考えてほしい。地道な作業によって論理力と思考力を強化しよう。
●論証力、計算力のアップを
論証問題では答案作成力もポイントになるが、論理性が身につけば答案も自然とよいものが書けるようになる。逆に答案を書くことは論理性を強化することに役立つので、論証問題でなくても答案をしっかりと書くようにしよう。普段の学習で式だけを羅列しているようでは、論証問題攻略は難しい。時間に関しては3題の問題を80分で解くので難しくはないが、考察に時間が必要な問題も多いため、計算に時間を取られないよう計算力強化も心がけたい。

理系数学

最近の出題傾向

●数学Ⅲ重視の出題
150分で5題の出題形式が定着している。前期試験において2018年度以降、数学Ⅲに関する内容を含む問題が、2019・2021年度は2題、2018・2020年度は3題、2022年度は4題出題されている。2023年度の前期では1題しか出題されなかったが、後期では4題出題されていることから、数学Ⅲからの出題が多いといえる。複素数平面については、現教育課程になってからは2018年度前期、2020・2022・2023年度後期で出題されている。
●論証問題では思考力・論理力が試される
前期・後期試験ともに、大問5題のなかに必ず論証の設問が含まれるのも特徴である。2021~2023年度の前期では2問ずつであったが、2023年度の後期では6問も論証の設問があった。微分法・積分法や不等式を題材とした標準的な問題だけでなく、整数と数列の融合問題やデータの分析と空間ベクトルの融合問題といった高度な思考力・論理力が試される論証問題も出題されている。

2024年度入試予想・対策

①入試予想
●2024年度は2018~2020年度および2022・2023年度ベースで
2017年度は計算量も多く思考力が求められる難しめの問題が出題されたが、2018~2020年度は全体的に標準的な難易度の問題が出題された。2021年度はコロナ禍における学習進度への配慮などのためか、数学Ⅲからの出題が少なく内容も易しめであったが、2022・2023年度は再び標準的な難易度の出題に戻った。以上より、2024年度の難易度は2018~2020年度および2022・2023年度と同程度であると考えたほうがよい。また、後期受験を考えている人は前期よりも問題のレベルが高いことに注意したい。
●微分法・積分法と場合の数・確率に注意
出題が予想される分野として可能性が高いのは微分法・積分法と場合の数・確率である。微分法・積分法に関しては、3題以上出題される可能性もあると思ってしっかりと対策をとっておきたい。場合の数・確率は他分野と融合されることも多く、思考力養成が不可欠である。また、論証力を見る問題が分野を問わず出題される可能性が高い。
②対策
●基本事項の徹底理解と計算力アップ
まず教科書で全分野の基本事項をしっかりと押さえたい。過去には微分可能の定義が問われたこともある。場合の数・確率は基本の理解が不十分だと大きく点を失うことになる。基本事項を学習した後は、標準的な入試問題集で典型問題を攻略していけばよい。その際に、どのように基本事項が用いられ解法が組み立てられているかを理解するようにしたい。融合問題や新傾向の問題が出題されることも多く、解法のパターンを覚えるだけではそれらに対処できない。また、問題を解くときは自分の手を動かすようにしてほしい。微分・積分に関しては特に計算力をつけておく必要がある。論証や新傾向の問題は、方針の検討などにどうしても時間がかかってしまう。そのため、速やかに計算することが重要となる。
●答案作成のトレーニングを
基本事項や典型問題の解法を習得した後は、微分法・積分法、確率などの分野を中心に得点力を高めたい。新傾向の問題や思考力の必要な問題も出題されるので、十分な演習をこなし実戦力を養ってほしい。また問題を解く際には、しっかりと答案を書くようにしよう。答案を書く訓練は、論理力を高め、論証対策にもなる。数学的帰納法・背理法などもその運用に慣れてほしい。

現代文

最近の出題傾向

①出題文の重厚長大さこそが神戸大学現代文の特徴
大問は1題のみだが、例年思想的なテーマを扱った重厚な長文評論から出題されている。2023年度に出題された文章は、商品の提示する物語を消費するようになった現代社会を論じた、4,600字程度の評論であった(2022年度より700字程度減少した)。年度によって多少のばらつきはあるにせよ、相対的に見てかなり難度の高い出題といえる。
②設問はオーソドックスな二次型記述・論述問題中心
設問は、漢字問題が1問(小問5問)で、説明問題が4問の、全5問構成が定番となっている。説明問題では、本文全体の趣旨に関わるまとめ問題(140~180字ほどと年度によって多少ばらつきはあるが、出題頻度は160字が最も多い)が必ず出題されている。それ以外は文脈読解型の説明問題で、全体の記述量は400字前後である。

2024年度入試予想・対策

①出題文の予想と対策
2021年度は4,500字程度の「倫理論」が、2022年度は5,300字程度の「言論論」が、2023年度は4,600字程度の「社会論」が出題された。本文量に関しては、多少の例外はあるものの、4,000~5,000字強の長文が出題されている。他大学と比較したとき、こうした「長文からの出題」を無視して対策を立てることはできないだろう。内容に関しては、若干の例外はあるにせよ、基本的には「近・現代の社会/文化状況やそこでの人間の有り様」に焦点をあてた文章を念頭に置くべきだろう。また、難易度的には、前述したようになかなか手強いものではあるが、まったく手が出ないわけではない。各人の読解力のレベルに応じて、標準~難しめのレベルの評論文に、できるだけ数多く取り組んでおくこと。具体的には、市販の問題集や予備校のテキスト、あるいは記述型の模試などを通じて、文章の論の展開の仕方に留意しつつ、文章全体の趣旨を的確に把握していく読み方を身につけていくことだ。焦らず、着実に読解力をつけていこう。
②記述・論述問題の予想と対策
若干の違いはあるものの、この10年間、設問の構成に大きな変化はない。したがって2024年度も記述・論述問題が中心になるはずだ。まったく手が出ないといった難問・悪問は見られないが、だからこそ、正統的な記述対策をきちんと積み重ねておこう。文脈把握型の記述問題に関しては、傍線部に関連する箇所を、短い字数で的確にまとめる練習を繰り返そう。そのうえで、気をつけなければいけないのは、本文全体の趣旨に関わる問題(通常は問四)である。これに対応するためには、問題演習の際、単に個々の設問を解くだけでなく、文章全体の趣旨を160字程度でまとめる要約練習もやっておくこと。いうまでもないことであるが、過去問の研究をおろそかにしてはいけない。しっかり地力をつけてから、最近5年間ほどを中心に、時間を計って繰り返し取り組んでみること。

古文

最近の出題傾向

近年5年間の出題状況は以下のとおり。

  • 2023年度『発心集』中古・説話・約1,650字
  • 2022年度『伊勢物語』中古・歌物語・約950字
  • 2021年度『平家物語』中世・軍記・約1,320字
  • 2020年度『讃岐典侍日記』中古・日記・約1,200字
  • 2019年度『今昔物語集』中古・説話・約980字

出典の傾向:有名作品の説話や軍記、あるいは説話的な文章を主軸とし、中古の物語や日記などの有名出典が交じるほか、2012年度には非有名出典である『松陰日記』(近世・女流日記)も出題されている。
本文字数:2023年度はかなりの長文であった。おおむね、本文に和歌がない場合に字数が増える傾向が見られる。
設問数:おおむね5、6題。
和歌:ここ数年間は和歌に関する出題は少ない。しかし2022年度は歌物語から出題されたので、和歌の下句についての心情説明(50字以内)と、和歌一首の大意が問われた。したがって和歌に関する出題の可能性を視野に入れた学習が望まれる。

2024年度入試予想・対策

主要な設問形式に即して、以下、対策のポイントを示す。

①文法問題
品詞分解・付属語の識別・助動詞を活用させる空欄補充・敬語の種類と敬意の対象、などが問われる。動詞の活用の種類や、助動詞を活用させる空欄補充など、かなり基本的な分野から出題されることもあるので、万全を期しておきたい。
②現代語訳問題
3、4箇所、問われる。従来はおおむね条件なしの出題にもかかわらず、大学公表の「出題の方針」によれば、前後の文脈を踏まえた解釈を求めているケースもあり、どこまで書き込むかの判断に迷う場合もあったが、近年は設問に指示がつくケースも見られる。
  • 2022年度:3箇所すべてについて「わかりやすく現代語訳しなさい」
  • 2022年度:3箇所すべてについて「わかりやすく現代語訳しなさい」
  • 2021年度:4箇所中1箇所について「具体的な内容を明らかにすること」
  • 2020年度:4箇すべてについて動作の主語の明示
  • 2019年度:4箇所中1箇所について指示語の具体化
答案作成は、まず重要古語や付属語に着目して正確に逐語訳し、次に文脈を踏まえ、現代日本語として適切な表現になっているか、不明瞭な点はないかを検討し、表現を整える。
③説明問題
2、3問、問われる。近年は字数制限のあるものが多い。
  • 2023年度:50字以内、60字以内
  • 2022年度:50字以内、40字以内、字数制限なし
  • 2021年度:50字以内、60字以内
  • 2020年度:50字以内、70字以内
  • 2019年度:60字以内、50字以内
傍線部そのものやその前後に、解答根拠となる箇所を絞り込める設問なら比較的解答しやすいが、和歌の解釈を前提とするものや、本文全体の流れを踏まえてまとめる必要のあるものは、かなり難度が高くなる。
これらの設問に対応する力を養うためには、本文の正確な解釈に加え、述べたいことを字数内で的確にまとめ上げる表現力も磨く必要がある。作成した答案を他者の目になって検討し、曖昧な箇所や誤読されそうな箇所はないかチェックする。正解例を見て素直に納得するだけではなく、各要素が本文のどこを根拠として導き出されるのかを吟味すること。

漢文

最近の出題傾向

①平易な文章に変わった
2023年度は唐の李瀚(りかん)が児童教育のために南北朝時代までの著名人の言行をまとめた『蒙求』からの出題で、読み取りやすい文章であった。過去9年の出典は以下のとおり。2014年度『百喩経』仏教説話、2015年度『秋声詩 自序』説話、2016年度司馬遷『史記』史伝、2017年度『太平広記』伝奇小説「人虎伝」、2018年度『唐摭言』詩話、2019年度『資治通鑑』史伝、2020年度『貞観政要』史伝、2021年度『夢渓筆談』随筆、2022年度『望溪集』史伝であった。出典に一定の傾向は見られず、様々なジャンルの文章が出題されている。問題文の長さは、2014年度は170字、2015年度は163字、2016年度は182字、2017年度は164字、2018年度は148字、2019年度は169字、2020年度は145字、2021年度は178字、2022年度は197字、2023年度は166字。
②白文の部分が減少
2023年度の問いの数は2022年度と同じく4、解答数は枝問も含めて7で、2022年度の6より増加した。2014年度は枝問があって解答数は8、2015年度は枝問を合わせて解答数は7、2016年度は6、2017年度は6、2018年度は7、2019~2021年度はいずれも8であった。ほかの大学の二次試験に比べて解答の数が多い傾向が見られる。
問いの種類は、語句の読みが2014年度から出題されるようになって定着し、2023年度は送り仮名をつけられた形で3つ問われた。「すべて平仮名で書き下しなさい」という問いは2、現代語訳が1、内容説明が1であった。
傍線部は白文で出題される傾向がある。2014・2015年度は、書き下し文と現代語訳の傍線部が白文であった。2016年度は傍線部・波線部のすべてが白文、2017・2018年度は書き下し文と現代語訳の傍線部だけが白文であった。2019年度は現代語訳のうちひとつだけが白文で、後の傍線部には返り点がつき、白文の傍線部が減ったが、2020年度は白文の傍線部が5と増え、返り点のみが1、傍線部以外でも設問と関わる部分が白文であった。2021年度は、傍線部、二重傍線部、波線部合わせて8ヵ所中の7ヵ所が白文であった。2022年度は、説明問題の傍線部2ヵ所には返り点・送り仮名がつけられており、書き下し文の傍線部に一部返り点がつけられていたが、現代語訳の傍線部は白文であった。2023年度は、現代語訳以外の傍線部にはすべて送り仮名がつけられた。字数制限のある説明問題は、2014~2017年度は4年連続で50字以内、2018・2019年度はともに60字以内、2020年度は50字以内。2021年度は20字以内、70字以内と2つあり、2022年度も50字以内が2つであったが、2023年度は50字以内がひとつであった。

2024年度入試予想・対策

①やはり白文を読む力が必要
2023年度は傍線部2ヵ所だけが白文であったが、2022年度は傍線部の3ヵ所、2021年度は傍線部、二重傍線部7ヵ所が白文であり、2016年度には傍線部すべてが白文で出題されたこともある。神戸大学の漢文では返り点・送り仮名のついていない白文を読む力が必要である。出典のジャンルは予想しにくいが、最近は史伝の割合が高く、また入試に頻出な有名作品からの出題も目立つ。また本文の長さは150字前後~200字までの文章が出題されると予想される。設問の種類については、現代語訳の問いが、2013年度は2ヵ所、2014年度以降は1ヵ所であったが、2019・2020年度は3ヵ所と2021・2022年度は2ヵ所、2023年度は1ヵ所。書き下し文は、平仮名ばかりで書き下すという形式で出題される。現代語訳や書き下し文では基本句形が試されている。2024年度もやはり語句の読み、現代語訳、書き下し文、そして内容説明や理由説明という設問が予想される。
②基本を確実に習得せよ
学習対策としては、まず基本をしっかりと身につけること。書き下しや現代語訳の問題には必ず基本句形が含まれるので、基本語の読みや意味から基本句形まで漢文の基本的な知識を習得することが第一である。
次にできるだけ多くの文章を読解しておくこと。問題集の記述式の問題を解くときも、ただ問いの解答を確認して終わりというのではなく、問題文全体の現代語訳を自分でつくってみること。漢和辞典なども活用し、自分の力で漢文を読み解く訓練をしておく必要がある。必ず過去問を解いて、内容説明や理由説明を制限字数内で要領よくまとめる練習をしておこう。また白文を読めるようになるために、基本句形の例文などを使って繰り返し音読することも大切である。

物理

最近の出題傾向

①出題分野
出題される大問数は例年3題であり、毎年「力学」と「電磁気」の各分野からは必ず1題ずつ出題されている。残りの1題の分野については、年度により異なっている。
②出題形式
大問1題あたりの小問数は4~5問程度であり、出題の形式は問い形式がほとんどである。また、解答の形式は記述式で、解答の導出過程を書く設問が多い。解答する際には、その過程で使用する物理量を自ら定義する必要がある。
③出題内容
問題の難易度は比較的平易で、特殊な設定の問題はほとんどなく、入試問題としてはいわゆる典型的なものが多い。

2024年度入試予想・対策

①物理の基本事項を完全に理解する
問題の難易度は比較的平易だが、何の対策もせずに解けてしまうほど簡単なものではない。物理の基本事項が正しく理解できているかどうかを、丁寧に問う問題が多い。したがって、教科書をきちんと読み、各分野の様々な定義を正しく理解し、物理の基本事項を着実に身につけておかなければならない。また、今後は「原子物理」の分野からの出題も増えてくると思われ、注意が必要である。
②日常の学習方法
神戸大学入試の最大の特徴は、解答過程を記述する問題が出題されることにある。問題の難易度は比較的平易だから、「答え」を得ること自体に苦労することはあまりないと思われる。だが、その解答の過程を、論理的にわかりやすく「答案」としてまとめることは、そうたやすくできることではない。実はこの能力をこそ、神戸大学は最も評価したい「学力」として受験生に求めていると思われる。したがって、普段から解答の過程を記述する訓練をしておくことが必要不可欠である。それは、何も特別難しいことではない。具体的には、初めに、解答に使用する文字を定義し(このとき図などを用いるのもよい)、式を立てる根拠となる法則名など(運動量保存則より、など)を明記した後にその式を書く。次に、その式を用いて解く要点だけ示して答えを書く(計算過程を詳細に記述する必要はない)。この手順を守りながら、答案を書く訓練を積むことが、記述力を身につける最も基本的かつ効率的な方法である。普段、問題集などを用いて行う問題演習を通して、この方法を習得してもらいたい。
③標準的な問題を解くスタイルを身につける
神戸大学の入学試験で問われているポイントは、答案の持つ論理的な整合性にある。したがって、論理的に破綻のない答案を書くことが、最も大切なことである。そのためには、標準的な問題を、標準的な解法で最後まできちんと論述し解答する能力を身につけたい。そういった堅実な力を身につけることこそが、神戸大学の入学試験に対しては求められている。
以上、述べたことに注意しながら、日々の学習を一歩一歩着実に進めていくことが大切である。学問に王道はない。継続こそが力だ。そして最後は、“必ず合格を勝ち取るんだ”という強い気持ちこそが、何よりも自分に力を与える。最後まで諦めずに頑張ろう!

化学

最近の出題傾向

①形式や出題分野のバランスは変わらず
例年、60分75点の配点で、大問4題が出題される。2023年度の出題内容は、大問Ⅰは水溶液の電気分解、大問Ⅱは陽イオンの分離と塩化鉛(Ⅱ)の溶解度積、大問Ⅲは環状エステルC5H6O2と立体異性体、大問Ⅳはデンプン、セルロース、グルコースなどであった。出題分野は、大問Ⅰは理論、大問Ⅱは無機(PbCl2のKSPを扱っているので理論を含む)、大問Ⅲ、Ⅳは有機(Ⅲは低分子、Ⅳは天然有機)で、出題分野のバランスも出題される大問順も2022年度とまったく同様であった。
2023年度の分量を2022年度の分量と比較してみると、リード文は2022年度に比べてわずかに減少しているが、設問文が2022年度に比べてわずかに増加(設問数は2問増加)しているため、問題全体としては2022年度とほぼ同じである。
②難易度は標準であるが、計算は有効数字3桁が多い
2023年度は「理論分解電圧」や「プラスチックのリサイクル手法」など一部にややなじみの薄い内容も含まれていたが、全体としては標準的な難易度の問題が多かった。
2020~2022年度に3年続けて出題された論述の設問が、2023年度は出題されなかった。また、計算過程を示す設問が2021年度から3年続けて2023年度も出題されなかった。一方、計算問題の設問では2022年度に引き続いて2023年度も有効数字3桁で答えるものが多かった。
難問は出題されないが、設問数が20問以上であり、試験時間が60分であることから、時間的な余裕はほとんどない。

2024年度入試予想・対策

①まずは、頻出の理論分野を押さえておこう
例年、大問4題のうち2題は理論分野から出題され、1題は無機を含む(場合によっては無機が中心で理論を含む)出題であるケースが多い。近年は、2019年度(結晶、熱化学、中和、電離平衡)、2020年度(熱化学、電解精錬、反応速度)、2021年度(反応速度と化学平衡、電気分解)、2022年度(沸点上昇、溶融塩電解)、2023年度(電気分解、金属イオンの分離と溶解度積)など、ほぼ理論の全範囲から出題されている。したがって、理論分野全体を幅広く演習しておく必要があるが、とくに、平衡、熱化学、気体ではやや難度の高い問題が出題されることもあるので、これらは高レベルの問題まで演習しておきたい。
②有機分野は、標準レベルの出題が続いている。高分子はやり残しをしないように
大問Ⅲでは、脂肪族または芳香族の化合物が扱われることが多く、内容は、構造決定や反応経路に関するものが多い。難易度はほとんどが標準で、高校レベルを超える難問や奇問は出題されない。したがって、教科書の徹底整理と、標準問題の徹底演習で十分である。ただし、過去に出題された問題と類似した問題が出題される傾向があるので、過去問は5年分程度は必ず見ておく必要がある。また、異性体に関する問題は増加傾向にあるので、立体異性体を含めて十分に注意を払っておきたい。特に2023年度のように環状化合物のシス-トランス異性体には注意が必要である。
大問Ⅳでは、天然有機化合物または合成高分子化合物が出題される。特に、アミノ酸やペプチドおよびタンパク質に関する出題頻度が高く、次いで糖が多く出題される。いずれも難度は決して高くなく、教科書程度の知識を身につけておけば十分に対応できる。核酸や合成高分子化合物などは未習であるために得点できない場合が多いので、浅くても一通りでも学習してやり残しをつくらないことが、最も有効な対策となる。
③無機分野の対策も十分に行っておこう
無機の問題は、一部に理論分野を含んで、あるいは、理論分野の一部に含まれて、または理論との融合問題として出題されることが多い。
難度はそれほど高くないので、教科書中心の学習でよいが、失点は許されないので、油断することなく、しっかりと演習を積み、万全の対策をしておきたい。
④論述も課せられる可能性がある
2023年度は論述問題が出題されなかったが、近年、論述問題は毎年のように出題されているので要注意である。字数制限がある場合もない場合もあるが、字数制限のない場合は、設問内容と解答用紙のスペースから1~2行程度(50~70字程度)と推定される。日頃から、ポイントや化学用語を絞って的確に論述できるように練習しておきたい。

生物

最近の出題傾向

①論述問題が多い
大問4題構成であり、いずれの大問にも1~数問の論述問題が含まれる。年度によって指定字数は異なるが、30字程度のものもあれば100字を超すものもあり、計10問程度出題される。指定字数の合計はここ数年大きく減ってきており、近年は300字前後である。出題テーマは、まったく知らない内容というよりは、市販の問題集に載っている問題と類似していることも多い。なお、生物用語を問う問題も必ず出題される。
②遺伝(遺伝計算)・進化・生態分野が頻出
遺伝(遺伝計算)の問題が出題されやすい。年度にもよるが、かなり時間がかかる本格的な問題が出題される場合もある。高得点をめざすためには、遺伝(遺伝計算)の対策が必須である。また、進化・生態分野が、毎年大問1題以上出題されている。

2024年度入試予想・対策

①様々なパターンの標準的な問題を、もれなく演習しよう
神戸大学の入試問題には頻出分野があるが、一方で、出題が極めて少ない分野はあまりない。したがって、苦手分野をつくらないような学習が必要である。また、空欄補充、選択、論述、計算など、様々な形式の小問が出題されるので、特定の形式の問題を避けたりすることなく、あらゆるタイプの問題の練習が必要である。ただし、データ量が多い実験考察問題が出題されることはあまりないので、難問を解く練習に時間を割くよりは、標準的な問題を何度も解き、それらを確実に解ききる力を養う、といった、地道な学習が求められる。
また、試験時間は60分であり、そのなかで10問程度の論述問題を含む20数問を解ききるためには、論述問題の練習が必須である。制限字数の合計は近年減少してきてはいるものの、年度によっては100字を超す小問が3問程度ある場合もあるので、要注意である。神戸大学の入試問題で見られる論述問題は、難易度は標準程度のものが多いが、それゆえ、論述問題を解くのに慣れていない受験生は、書く内容が明確でない状態のまま書き始めてしまうことがある。その結果、解答用紙上で一部を消したりしながら解いてしまい、想定外に時間がかかってしまう。このようなことにならないよう、日常の勉強時から、論述問題を解くときは、書く内容を明確にすることと、それを速く書き出すことの両方を意識した練習を行おう。
②遺伝(遺伝計算)・進化・生態分野は特に念入りに学習しよう
2017~2023年度の直近の7年間では、遺伝(遺伝計算)は2017・2019・2022・2023年度に、進化はすべての年度に、生態は2019~2023年度に出題されている。これらは頻出かつ差がつきやすい分野である。特に、遺伝(遺伝計算)には様々なパターンがあり、一朝一夕には実力がつかないので、時間をかけ、様々なパターンの問題を解く練習を積んでおこう。また、大学によっては進化・生態があまり出題されない場合もあるので、これらの分野は比較的勉強がおろそかになりがちであるが、神戸大学を受験する受験生は、特に意識してこれらの分野の問題を繰り返し練習しよう。なお、これら以外の頻出分野としては遺伝子があり、2017~2023年度では、2017・2018・2020~2023年度に出題されているので注意しよう。

特派員の声 ~合格の秘訣!!~

理学部 1年 K.O.特派員

特派員
英語の対策法
英語の試験時間が短いところだったので、取るべき問題と、そうでなくてもいい問題に分けて、取るべきところはなるべく満点近く取れるように意識していた。あとはどの大学でも関係ないところだと思うが、単語、文法、構文の知識など、細かいところで最後差がつくので、早めにきちんとやることが大切だと思う。

国際人間科学部 1年 まなつ特派員

特派員
数学の基礎と現代文の記述
数学は基本が押さえられていれば解ける問題が多いので、あえて難しいことはしませんでした。また、神大オープンや本番で解けない問題があっても、みんな解けていないから心配ないと考えることで落ち着いて受験できました。
現代文は記述量が多く初めのうちは中々書けませんでしたが、何度も書いて書き直してを繰り返すことでだんだんと慣れてきました。毎年同じような字数の記述が出されているので、何度も書いて慣れることが大事だと思います。

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