AI時代にも役立つ経済・経営の学びとは

2019年10月17日掲載

変化の激しい時代。うまく生き抜くためには何が必要か…という話になると、決まって出てくるのがテクノロジーの話題です。しかしだからといって、皆が、理系に進んで最先端技術を身につければ良いというわけではありません。社会課題を解決するためには、まず問題を正しく認識することが必要です。そしてそれには社会の仕組みを知ることが大切です。AIにしてもエンジニアだけでなく、AIを使いこなせる人がまだまだ求められていくでしょう。ということで今回は、来たるAI時代にも活躍できる人たちの特徴や、社会の仕組みを知るには不可欠な学問、経済学と経営学の魅力を紹介していきたいと思います。

来たるAI時代に活躍できる人になるために、今、知っておくべきこと

AI時代の学習戦略 いま、学ぶべき学問とは

皆さんは、「データドリブン経営」や「データドリブンマーケティング」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。データドリブンとは、マーケティングデータやWEB のアクセスデータなどを分析し、経営の意思決定などに役立てていく手法のことです。ビッグデータの解析技術やデジタルマーケティング技術の発展により、様々なデータが可視化されるようになり、日本でも導入を試みる企業が増えていて、それに伴い、デジタル技術に詳しいIT 人材のニーズがますます高まっています。ただ、そうはいっても皆が揃って最先端技術を身につければいいというわけではありません。なぜならテクノロジーはあくまでツールであり、重要なのはその使い方だからです。今どき、文系や理系を分けること自体、少し時代遅れかもしれませんが、大雑把に言ってしまえば、これからの時代は、理系の人たちも企業経営やマーケティングを当たり前のように学び、文系の人たちもテクノロジーについて当たり前のように学ぶことが、これまで以上に求められるようになるといっていいでしょう。もちろんこれはデータドリブンの話に限ったことではなく、社会全体に当てはまることだと言えます。そこで今回は、来たるAI 時代に活躍するために、これからを生きる若者たちが今、知っておくべき視点について考えていきたいと思います。

理系からも文系からも注目されるデータサイエンティストって何?

さきほど、データドリブンに注目が集まる中、デジタル技術に詳しいIT 人材のニーズが高まっているという話をしましたが、もう少し具体的にいうと、これはデータサイエンティストと呼ばれる人たちのことを指しています。例えば、企業が新しいサービスをはじめようとする時、知りたいのは、顧客が今後どのようなサービスを期待しているかという情報です。大量にある過去の顧客データ(ビッグデータ)の中から、新しいサービスに関連した情報を引き出し、さらにその情報を整理分析することで、新サービスの展開や戦略を考えるというわけです。このように、ビッグデータの中から大事な情報を導き出し、利用しやすいように加工したりするのがデータサイエンティストの仕事です。当然、データを整理し分析するプログラムを組むにはプログラミングの知識や技術に長けた理系出身のデータサイエンティストが必要不可欠です。しかし最初に述べたように、テクノロジーはあくまでもツール。今は、その分析したデータを企画や流通、販売などの各セクションでどのように活用すればいいかを考えられる、たとえば経済学や経営学の知識を持った文系データサイエンティストの需要もこれまで以上に高まっているのです。近い将来には、こうした人材が深刻な人手不足になるという予想もあるので、文系の人も理系の人も、今のうちに、データの分析手法や、統計学の知識、データ処理の基礎知識などを身につけておくとよいでしょう。きっとこの先、様々な場面であなたを救ってくれるスキルになるはずです。

いくらAIが進化しても、課題を見つけるのは人間の目

AI時代にも役立つ経済・経営の学びと

また、いくらAI やビッグデータの解析技術が発達したといっても、テクノロジーが勝手に社会課題を解決してくれるわけではありません。最初にも触れたように、社会課題を解決するためには、まず課題を正しく認識することが必要です。そしてそれには社会の仕組みを知ることや、現状を自分の目で見て、確かめることがとても重要になってきます。例えば、バングラデシュには、貧しい農村の主婦たちに無担保でお金を貸してくれる、世界でも有名なマイクロファイナンスというサービスがあります。このサービスを立ち上げ、普及に努めたことからノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行の創始者、ムハマド・ユヌス博士は、国立大学の経済学部長として教鞭をとっていた際に、既存の経済学の理論に疑問を持ち、貧困の実態を探るために自分の足で貧しい農村を歩きまわったといいます。

そこで、銀行からお金を借りられない貧困層の人々が、高利貸しの残酷な取り立てによってさらに厳しい状況に追い込まれていることを知り、自分のポケットマネーを貸し出したことがグラミン銀行設立のきっかけになりました。この話を聞くと、いくらテクノロジーが発達したといっても、課題を見つけるためには結局、人や社会を見る目や共感力が重要だということに気づかされます。テクノロジーやサイエンス以外にも、フィールドワークなどを通じて得られるこうした知識や経験が、これからの社会を生き延びていくためには欠かせない、重要な武器になってくれるでしょう。

自分の力を活かせる場所を見極める目を養う

AI時代にも役立つ経済・経営の学びとは

それからもう一つ、将来の変化を予測することが困難な時代に、できれば身につけておきたいこととして、「自分の力を活かせる場所を見極める」という能力があげられます。以前のように、「◯◯が得意なら、△△で活躍できる」といったロールモデルがあればよかったのですが、そうした状況が急速に失われつつある今、自分が活躍できる場所は自分で責任を持って探すというのが、思いのほか大事なことになってきたように思います。そこで今回、紹介したいのが、今、会社の常識を覆す次世代型組織として話題になっている「ティール組織」です。これは、ベルギーの経営学者フレデリック・ラルー氏によって紹介され、日本でも、少しずつ成功例が誕生していると言われている新時代の組織モデルで、社長や上司がマネジメントをしなくても、目的のために進化を続ける組織と定義されています。社員一人ひとりに意思決定権があり、責任感を持って行動できるようになることから、自然と個のスキルが高まり、会社全体の利益も向上するだろうと期待されているようです。

社会に出るまではどうしても大きな企業に目がいきがちですが、たとえば企業経営について少し知識を深めるだけで、ここで紹介したティール組織のような、これまで知らなかった企業や組織の仕組みが見えてきます。自分の力を最大限に生かすにはどういう組織が向いているのか、自分なりの判断ができるようになるというわけです。

「AI やロボットに仕事を奪われる」という話を聞いても、もう焦ることなんてありません。これまでと同じやり方が通用しなくなるのなら、新しいやり方を身につければいいのです。AI・ビッグデータ時代により需要が高まるとされるデータ分析力を磨き、自分の目で見た現状を分析して課題を明らかにする力を育み、自分の力を最大限に活かせる場所を見極められるようにさえなれば、きっとどんな未来が訪れようとも、あなたはたくましく活躍し、幸せな人生を送れるはずです。


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