- 2026年08月17日
筑波大 一般選抜への面接導入
2028年度入試から、筑波大の一般選抜(前期日程)は大きく姿を変える。「多面的評価」をめざし、その一環として面接・口述試験を本格導入する。面接・口述試験を課す予定の学群・学類の前期日程の志願者数は、ここ3年ほど約2,000人で推移しており、大規模な変更に注目が集まっている。導入に至る経緯や問題意識、具体的な内容や実施スケジュールについてお話を伺った。
- この記事は、進学情報誌Guideline 2026年7・8月号掲載時点のものです。
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追求し続けた「多面的評価」
今回の入試改革は、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」という学力の三要素を総合的に判定するために行われる<図表1>。この改革は知識、思考力、主体性をバランスよく評価できないかという検討から始まった。
筑波大のアドミッション・ポリシーには「…本学の教育を受けるのに必要な基礎学力を有し、探究心旺盛で積極性・主体性に富む人材を受け入れます」とあり、以前から、特に「主体性評価」をどのように一般選抜に組み込むか検討してきた。
2021年度入試から一般選抜で「調査書」を活用し、点数化する予定だった。高校生を最も近くで見ているのは高校教員であり、学力試験では測れない生徒の積極性や探究心、継続的な努力などは、高校教員の評価を通して見ることができる。それなら調査書で判断できると考えたからだ。
ところが、調査書活用の公表後、新型コロナウイルス感染症の流行が始まり、通常の学習活動が大きく制限されてしまう。調査書を適切に評価することが困難となり、実施は延期せざるを得なくなった。
加えて、文部科学省の方針変更により、調査書の内容がかなり簡素化され、想定していた詳細な評価情報が大学に提供されないことが明らかになったため、導入予定だった「調査書を用いた主体性評価」の試みは頓挫することになった。
しかし、「主体性評価」自体をあきらめたわけではなかった。調査書が使えないなら、どこで主体性を評価するのか。出した答えが2028年度一般選抜(前期日程)での面接・口述試験導入だった。制度設計を担った竹中佳彦教育担当副学長は次のように語る。
「学内にさまざまな意見があったのは事実です。受験者数を考えれば、面接には膨大な人的コストがかかりますし、本当にその方法で見極めることができるのかと疑問に思うのも当然です。しかし、主体性を判断するためには面接・口述試験を行うことが適切であろうということで合意に至りました。」
「教科・科目試験」を「論述試験」に変更
今回の入試改革でもう一つ重要なのは、「教科・科目試験」ではなく「論述試験」へと変更することだ。一見、単なる言い換えにも思えるが、そこには明確な意図がある。
従来の筑波大の前期日程も記述中心ではあったが、採点効率を高める必要もあり、記号選択問題がある。今回の名称変更は、そうした記号“選択”を極力排し、“論述”中心にするとの意思表明だ。
「基礎となる知識を問わないわけではありませんが、知識そのものよりも、知識をどう活用するのかという部分を論述によって確かめたいわけです。知識を活用する力、思考力を確認したいという点を強調する意味で、あえて論述試験としました。」(竹中副学長)
実際、歴史などの試験では、論述形式の問題が出題されており、そうした類の問題は今後も出題されることになるだろう。具体的なイメージについて、竹中副学長は次のように説明する。
「社会・国際学群や人間学群における論述試験では、総合的な問題が出題される予定です。イメージとしては小論文試験に近く、課題文を読ませて、それについて論じる形式になるでしょう。また、総合学域群で実施する総合選抜『文系』でも、人文・文化学群が出題する国語の問題、社会・国際学群および人間学群の総合的な問題の3パターンから選択させていずれかを解く形を想定しています。」
面接・口述試験を課さない学類も
筑波大の一般選抜(前期日程)には、総合選抜と学類・専門学群選抜の2種類があるが、総合選抜では面接・口述試験を課さない<図表2>。
総合選抜とは、入学時点で学群・学類を決めずに出願できる入試で、「文系」「理系Ⅰ」「理系Ⅱ」「理系Ⅲ」の4区分で実施される一括募集の形態をとり、合格者はまず総合学域群に所属する。
総合学域群では、1年間、全学生必修の共通科目とさまざまな専門導入科目を学んで幅広い学修を進めながら自らの問題関心を深め、専門に学びたい学類・専門学群に移行するシステムになっている。学長特別補佐の清水諭特命教授は、総合学域群の特性について次のように説明する。
「なぜ専門を決めないで志願したのかという点が大切です。広く深い学びを経験した後に、自分で次の道を決めていくわけですから、主体性、積極性、好奇心、探究心が求められます。」
そのため、総合選抜では、面接・口述試験の代わりに「学びの設計書」を提出してもらい、なぜ筑波大で学びたいのか、どこに関心があるのか、どのようにこれからの学びを組み立てていきたいのか、そうした学修計画などを踏まえた主体性や構想力を汲み取ることにした。
| 論述試験 | 面接・口述試験 | 学びの設計書 | 実技検査 | |
|---|---|---|---|---|
| 社会・国際学群、人間学群、生命環境学群、 理工学群(数学類を除く)、情報学群、医学群 |
〇 | 〇 | ||
| 総合選抜 | 〇 | 〇 | ||
| 人文・文化学群(人文学類、比較文化学類、 日本語・日本文化学類)、理工学群(数学類) |
〇 | |||
| 体育専門学群 | 〇 | 〇 | ||
| 芸術専門学群 | 〇 |
※筑波大資料を基に河合塾で作成
学類・専門学群選抜の場合は、専門学群(体育専門学群、芸術専門学群)とそれ以外で対応が異なる。体育専門学群と芸術専門学群では従来から実技試験が課されており、その試験を通して一人ひとりの個性や適性、能力、主体性などを多面的に評価できることから、従来どおりの試験を実施する。
今回、新たに面接・口述試験が課されるのは残りの23学類中19学類だ。人文・文化学群の人文学類、比較文化学類、日本語・日本文化学類、および理工学群の数学類の4学類は面接・口述試験を実施しないが、そこにはそれぞれの学問観が色濃く反映されている。
「人文・文化学群の3学類は、『読む能力』『書く能力』を中心に多面的評価を行う方針です。3学類が合同で試験問題をつくり、その中で主体性などを含めた多面的評価を行う予定で、論述試験の試験時間を他学類よりも長めに設定することを検討しているようです。
また、数学類では従来から論述形式の問題が出題されており、論理的思考力などの認知的側面、記号などを適切に用いて他者に正確に伝える力などの表現的側面、さらには粘り強さ、厳密性への感度、未知の問題に取り組む姿勢といったことを多面的に評価できる方法として論述試験をとらえているようで、今回は面接の導入を見送るという判断をしたようです。」(竹中副学長)
大規模面接の実行可能性
一般選抜で面接・口述試験を導入する19学類の試験内容は学類ごとに判断することになっており、それぞれのアドミッション・ポリシーに応じて、その学類での学びに必要な能力をさまざまな方向から見るような試験になるはずだ。
「志望動機や、本当にこの学類でなければ勉強できないのかといったようなことは、どの学類でも問われるだろうと思いますが、場合によっては具体的な問題を解かせたり、社会的な知識を問うたりすることがあるかもしれません。」(竹中副学長)
面接・口述試験を受ける受験生は全体で2,000人規模にのぼると想定され、学類によっては100名を超す。果たして実行可能なのだろうか。
清水特命教授は「面接にかける時間は大枠では決まっていますが、教室やスタッフの確保なども含めて、まだ詳細なチェックは終わっていません」と語る。試験日程に関しては、2日間実施になる可能性は高いとのことで、そうなると、受験生にとっては宿泊費や移動費の負担増になることは否めない。
ただ、面接・口述試験の実現可能性に関して、本多正尚アドミッションセンター長は次のように補足する。
「本学では他の国立大に先駆けて長年推薦入試やAC入試を実施してきました。特に推薦入試は募集定員の約3割を占め、毎年1,500名くらいの受験生を面接していますから、導入に関してそれほど大きな混乱は生じないだろうというのが現時点の認識です。」
この規模で面接・口述試験を行うとすれば、多くの教員が面接を実施することになるが、学類で共通のプロトコルを整備して、面接者による違いをできるだけなくす工夫がなされる。一般に学力試験は公平で、面接は不公平だという印象を持たれやすいが、竹中副学長は別の見方をする。
「点数だけで輪切りにするのが本当に公平なのでしょうか。それよりも一人ひとりの個性を丁寧に見ることこそ公平に扱っているのではないでしょうか。主観性への不安も理解できますが、知識だけで測る公平性には限界があると思っています。」
試作問題は1年前に提示予定
受験生や高校現場が気になるのは、やはり面接・口述試験や論述試験の形式や内容だろう。どのような対策をすればいいかという点も気になるところだ。
「事前に対策できないような入試をしたいというのが理想です。高校生活の中でしっかり学び、関心を高め、自分の言葉で説明できるようになっていれば、その延長線上で臨める入試にしたいと思っています。」(竹中副学長)
ただし、高校現場の不安は理解しており、高校との対話を通じて丁寧な情報交換を行っていく。2026年度中には実施要項や例題レベルの試作問題を提供する予定で、2027年度中には全体のイメージがわかる試作問題を公開する予定になっている<図表3>。
| 2026年 秋以降 |
「論述試験」試作問題公開①(出題例など一部分) |
| 2027年 3月頃 |
追加の入試変更点公表 面接実施方法・入試日程・第1段階選抜の予告倍率など 「学びの設計書」のフォーマットも公開予定 |
| 2027年 秋以降 |
「論述試験」試作問題公開②(試験時間を考慮した全体がわかるもの) |
※取材内容を基に河合塾で作成
最後に、竹中副学長は次のように締めくくった。
「筑波大は建学以来、『開かれた大学』として多様な人が出会い、学び合うことで新しい知を生み出すことを大切にしてきました。一つの答えを早く出すことよりも、問い続けること、対話を重ねること、分野を超えて考えること。そうした学びに挑戦したい受験生にとって、本学は大きな可能性を提供できると信じています。ぜひ面接・口述試験を怖がらずに受けてほしいと考えています。」
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