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  • 2023年9月19日

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データサイエンス学部 学びの特徴と新設の動向

この記事のポイント!
デジタル人材不足などを背景に新設が相次ぐ
統計×専門分野×課題解決を文理融合で学ぶ
気になる入試科目は?

デジタル人材不足などを背景に新設が相次ぐ

近年、「データサイエンス」を名称に含む学部・学科(以下、データサイエンス学部)を新設する大学が急増しています。

データサイエンス学部は、データサイエンティストの育成をめざす学部です。データサイエンティストとは、データを収集・分析し、社会課題の解決や、新たな価値の創造などを行う人材のことで、高度情報化社会の進展や、日本国内におけるデジタル人材の不足を背景に、ニーズが高まっています。

<図表1>はデータサイエンス学部の例です。理工系・情報系学部や、経済・経営系学部の学科・コースとして設ける大学も見られます。

また、文部科学省は理工農学系への学部再編や、情報系学部の定員増を支援する政策(注)を進めており、2023年7月には初回の選定結果が公表されました。神田外語大学国際経営データサイエンス学部、大妻女子大学データサイエンス学部など、これまで理系学部を持っていなかった大学や女子大学も選定されています。そうした流れもあり、データサイエンス学部は今後も増加していくと予想されます。

(注)「大学・高専機能強化支援事業」デジタル・グリーン等の成長分野をけん引する高度専門人材の育成をめざす大学や高等専門学校を支援する事業。支援1:理工農学系への学部転換(公私立大学が対象)と、支援2:情報系分野の定員増(国公私立大学・高専が対象)の2つからなる。改組のためには別途、設置認可申請が求められる。

図表1 データサイエンス学部の例
データサイエンス学部の例

統計×専門分野×課題解決を文理融合で学ぶ

多くのデータサイエンス学部のカリキュラムは、次の3本柱で構成されています。それぞれの概要を見ていきましょう。

データサイエンス学部 カリキュラムの3本柱

(1)統計学・数学・情報学の学び

データサイエンスの基礎となる、統計、プログラミング、データベース、情報ネットワーク、人工知能(AI)などに関する教育です。1・2年次に基本的な科目を学び、徐々に発展させていく、積み上げ型の教育が行われます。

(2)専門分野の学び

社会で活躍するデータサイエンティストは、企業や自治体、スポーツチームなどに所属し、そこで抱える課題の解決や価値創造に向けた活動を行います。そこでデータサイエンス学部でも、課題解決・価値創造の対象とする分野に関する教育が行われます。

設置される科目は大学によって多様です。<図表2>のように、コース・専修を分けたり、履修モデルを示したりしている場合もあります。

図表2 データサイエンス学部 コース・専修分けの例
DS系学部・学科 コース・専修分けの例

(3)課題解決・価値創造の学び

企業や自治体が抱える課題をテーマとして、データの収集、分析、解決策の提案といった、データサイエンティストが行う一連の活動を体験する学びです。

例えば、一橋大学ソーシャル・データサイエンス学部では、3年次に「PBL演習」を置いています。多数の企業や政府系機関からのデータ提供を受け、課題解決につなげるトレーニングを行うカリキュラムとなっています。

インタビュー記事「一橋大学ソーシャル・データサイエンス学部」へリンク

★文理融合・領域横断の学び

(2)(3)とも関連しますが、文理融合・分野横断の教育が行われることも、データサイエンス学部の特徴です。2021年にデータサイエンス学部の専任教員の専門分野を調べたところ、<図表3>のように、人文・社会科学系の研究者が4分の1を占めます。

図表3 データサイエンス学部 専任教員の専門分野(n=243)
データサイエンス学部 専任教員の専門分野(n=243)

情報系学部との違いは?

データサイエンス学部では、統計学などをカリキュラムの軸としつつも、文系分野の専門科目や、課題解決・価値創造に関する演習科目なども重視した、より文理融合・分野横断の学びに力を入れています。

一方、2000年代以前から設置されていた情報系学部では、情報科学や情報工学をカリキュラムの軸として、計算機アーキテクチャやオペレーティングシステムなどのコンピュータ関連の理論や技術にも触れる、より理系色の強い教育が行われる傾向があります。

しかし近年は、データサイエンティストの育成をめざしたり、文理融合の学びや課題解決・価値創造の学びに力を入れたりする情報系学部も増えています。

大学選びの際は、学部名だけで判断せず、必修科目や演習科目などを中心に、教育内容を確認するとよいでしょう。

気になる入試科目は?

最後に、大学入試の特徴も紹介します。

国公立大学の一般選抜前期日程では、個別試験で数学Ⅱ・数学Bまでを課すのが一般的です。一方、私立大学は数学を選択しなくても受験できる入試方式を設ける場合が大半です。

しかし、いずれにしろ数学の基本的な理解は必須のため、入学後に高校数学の必要な分野をフォローする学び(リメディアル教育、補習教育)を行う学部も多いようです。数学が苦手な生徒は、こうしたフォロー体制もチェックするとよいでしょう。

また、高校数学の中でも、確率・統計に関わる分野(数学Ⅰ「データの分析」、数学A「場合の数と確率」、数学B「確率分布と統計的な推測」)や、微分・積分の基本的な考え方は身につけておきたいところです。

進学情報誌「Guideline」 データサイエンス特集

2023年度新設されたデータサイエンス学部に着目。新設の動きや教育の特色・カリキュラムを紹介しています。

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