- 2025年07月02日
この記事をシェアする
入学金の二重払い改善を
-文科省が私立大に要請
文部科学省は私立大学の入学金について、受験生の負担を軽減する方策を検討するよう大学に要請した。詳細は以下のとおり。
併願可能な年内入試の拡大で、入学金の二重払いが顕在化
入学しない大学に納付する入学金が受験生・保護者の負担になっているとして、文部科学省は私立大学に対し、軽減策を検討するよう通知した。背景には併願可能な総合型・学校推薦型選抜を実施する大学が増えていることから、入学金を複数の大学に納付する「二重払い」が拡大している状況がある。
現在の大学入試では、合格発表後の一定期間内に入学金を納付することで、入学資格を得る形となっている。大学ごとに納付期限が異なるため、日程によっては先に期限が来る大学と後に期限がくる大学それぞれに入学金を納付する、二重払いの状況が生じる場合がある。併願大学を検討する際、入試科目・入試難易度などとともに入試日程も重要な検討要素になっている。年内に実施する総合型・学校推薦型選抜と2月以降に実施する一般選抜間で併願する場合には、日程が離れているため、先に合格した大学への入学金は必ず納付することになる。
かつて入学金・授業料などの初年度学費は一旦納付すると、その後他大学へ入学先を変更しても返還されることはなかった。高額な負担から納付金の返還を求める裁判が起こり、2006年最高裁は授業料などは返還すべきだが、入学金については「大学側が合格者に入学できる地位を与える対価」と判断し、原則返還の必要はないとの判決を出した。ここから授業料などは3月31日までに申請があれば返還するものの、入学金については返還されないのが通例となった。
早期なら入学金返還に応じること、入学金の分割払いを導入することなどを要請
今回、文部科学省が私立大に要請したのは次の3点だ。
- 受験生への配慮を要請したこと
- 入学料の額や納付時期などの趣旨や考え方を積極的に社会に説明すること
- 入学料の額の抑制に努めること
- 入学しない学生の納付する入学料に対し、負担軽減の方策を講ずるよう努めること
1点目は、各大学が設定する入学金の額や納付時期等の趣旨や考え方について、学生や保護者などの理解を得られるよう積極的に説明すること。
2点目は、学生の経済的な負担軽減を図る観点から、入学金の額の抑制に努めること。
3点目は、入学しない学生の納付する入学金に係る負担軽減のための方策を講ずるよう努めること。
通知では、併せて次のような観点を考慮することが望ましいとしている。1つは、複数大学へ入学金を納付することにより進路選択の幅を狭めることのないよう、経済的に困難な学生への特段の配慮。2つ目は、入学金納付後の入学辞退の意思表示の時期が、辞退者の代わりの入学者を決定することができる時期かどうか。3つ目は、入学金納付時期を複数回設定するなど時期の設定。
これらをまとめると、入学金の額を抑えること、入学辞退する受験生に対し、ほかの入学者が見込める時期であるなら入学金返還に応じること、入学金の納付を分割払いとすることで全額支払わなくてもすむようにするといったことが大学に求められている。この要請を受け、2026年度入学者に対し、各大学がどのように対応するかが注目される。
- 関連コンテンツ
-
- 受験や大学生活っていくらかかるの? | 入試の基礎知識 Kei-Net
- 入試・教育トピックス
受験費用(受験料や交通費、宿泊費)、大学入学後にかかる費用(入学時に支払う「入学金」や年間の「授業料」)、大学生活でかかる費用(1カ月の生活費)をそれぞれを解説します。
大学教育・高校教育・大学入試に関するニュースやデータ、河合塾による解説記事などをご提供します。
この記事をシェアする