- 2025年08月15日
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2025年度入試私立大 小規模大の定員減で充足率改善
日本私立学校振興・共済事業団が2025年度の私立大学・短期大学等の入学志願動向の調査結果を発表した。私立大学全体の志願者数は大きく増加した。合格者数は減少したものの、入学者数は増加に転じ、定員充足率も100%を超えた。定員割れの学校数の割合も私立大学では53%と前年から改善された。以下、調査結果から浮かび上がった2025年度入試の特徴を振り返る。
1私立大入試の状況
6年ぶりに志願者増も合格者は減少
2025年度の私立大の延べ志願者数は3,956,823人(前年比107%)と大きく増加した<図表1>。
近年は18歳人口の減少により競争緩和が進んだことなどから志願者の減少が続いていた。今春は18歳人口が増加に転じたことや進学率の上昇、新課程初年度入試という環境で一人あたりの受験校数が増加したことなどが要因で志願者が増加したとみる。入学定員は約1千人減少した。2003年以来22年ぶりの減少である。志願倍率(志願者数÷入学定員)は前年の7.4倍から7.9倍とアップした。
合格者数は1,465,691人(前年比98%)と減少した。一方、入学者数は510,839人(同103%)と増加した。とくに推薦者等入学者数が273,593人(同106%)となっており、入学者増はほぼ推薦者等の入学者となっている。
私立大学全体の入学定員充足率(入学者数÷入学定員)は102%と前年の98%と比べ改善している。

- 日本私立学校振興・共済事業団資料より(図表2以降も同様)
- 「推薦等入学者数」は「入学者数」の内数で、総合型選抜の数値を含む
地区別では都市部と地方で異なる動向に
<図表2>は大学所在地別でみた入試の状況である。入学者数の増加によって全国的に充足率はアップしているが、地区ごとにみると、北海道・東北地区の充足率が97%、甲信越地区が96%、中国・四国地区が87%と、地方では充足率が低い状況が続いている。地方の大学は、志願者の大部分を地元出身者が占める。人口減も地方で進んでいることから、充足率の低下に大きな影響を及ぼしているものとみる。一方で難関大・有名大が多い都市部では充足率100%を超えている地区が多い。九州地区で充足率105%、関東地区でも充足率が103%となっている。一部では想定以上の歩留りの良さから入学者を確保しすぎたとみる大学があり、定員管理は収容定員で行うものとはいえ、こうした大学が次年度以降、合格者数を調整するのか注視したい。

小規模大は依然、入学者確保が厳しい状況
<図表3>は私立大の定員規模別にみた入試の状況である。全体の動向とは異なり、収容定員4,000人未満の小規模大では志願者が減少した。入学者数は増加し、充足率もアップしているが、依然として入学者を確保できていない大学が多くみられる。実際に入学定員をみると、小規模大では約4千5百人の減員となっており、充足率の改善はこの効果が大きい。定員割れが深刻な大学は助成金の減額や学部再編が認められないなどのペナルティがあり、充足率が低い大学を中心に定員減の動きは続くものとみる。
一方で、収容定員4,000人以上の中規模大、大規模大の充足率は100%を超えた。とくに中規模大は入学者数が前年比106%と大きく増加しており、歩留率も前年から3ポイントアップした。大規模大では志願者増・入学者増が近年続いており、今春も充足率106%と小規模大、中規模大以上となった。

定員割れの状況はやや改善も、依然として半数以上の大学が定員割れ
<図表4>は私立大の定員割れ学校数の推移である。今春の定員割れ大学の割合は53%と前年から6ポイントダウンした。ただ、定員割れの状況が大幅に是正されたわけではなく、過去の状況と比較しても依然としてその割合は高い。
定員未充足の大学の中には、収容定員の充足率を適正にするために合格者を減らした、つまりその気になれば入学者の確保は可能な大学もあるとみる。こうした大学は入学者の確保が難しいという状況ではない。一方で注目したいのが充足率80%未満の大学である。これらの大学の多くが入学者の確保を課題にしていたが、今春は18歳人口増などによる入学者数の増加に加え、定員割れを防ぐべく入学定員を減員した大学がみられたことから、充足率80%未満の大学は182校→141校と数を減らした。来春も入学定員を減員する大学がみられており、しばらくは定員割れの状況が改善の方向に向かうものとみる。

2私立短期大入試の状況
志願者は1割以上減少、短大入試の縮小はますます加速
2025年度の私立短大の延べ志願者数は35,236人(前年比88%)となった<図表5>。12年連続の志願者減となる。志願倍率も前年に続き1倍を切っており、私立短大にとって厳しい状況が続いている。4年制大への進学率が上昇を続ける中、短大の進学を希望する受験生が減少傾向にあること、とくに今春は短大数も大きく減少しており、入試の縮小が加速している。
合格者数は32,315人(前年比88%)で志願者の9割以上が合格していることになる。入学者数も28,086人(前年90%)と年々減少している。
来春も募集停止を発表している短大が約20校あり、短大の縮小はより一層進む。

定員を充足する短大はわずか1割
<図表6>は私立短期大の定員割れ学校数の推移である。今春の定員割れ短期大の割合は88%とダウンした。これは定員割れが深刻な充足率80%未満の短大数が募集停止などによって減少したことが要因であり、定員が充足した短大が大きく増加したわけではない。今後も定員未充足が続く短大を中心に募集停止が進むとみられ、定員割れ短大数の割合は数値上は改善される可能性がある。

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