- 2026年10月19日
2027年度医学科入試
若干の競争緩和の傾向
2027年度の18歳人口は前年並みであることから、大学志願者全体も前年から大きな変化はないと推測する。第2回全統共通テスト模試から医学科志望者の動向を見ると、国公立大では不人気傾向にあり、私立大も以前ほどの人気は感じられない。医学科志望者にとっては若干ながら競争緩和が期待できる状況である。2027年度の医学科入試を取り巻く環境や入試の変更点などを確認し、冷静に志望校を検討してもらいたい。
では、来春入試の受験環境と、最新の入試動向について詳しく見ていこう。
国公立大
国公立大医学科の模試志望者は減少
今夏実施した第2回全統共通テスト模試における国公立大医学科の志望者数は、メイン入試である前期日程では前年比93%と減少した<図表1>。国公立大の前期日程全体の志望者数が前年比96%であることから、現状では狙いやすい状況になっている。後期日程では前年比81%で、減少率は前期日程を上回った。
<図表2>は第2回全統共通テスト模試における、国公立大医学科(前期日程)志望者の成績分布である。医学科の予想ボーダーラインに相当する得点率帯(ボーダーゾーン)を網掛けで示した。分布を見ると、成績下位層だけでなく、ボーダーゾーンに相当する得点率帯の志望者も減少していることがわかる。
もちろん医学科入試における合格までのハードルは依然として高い。現時点では高成績層も減少しているため、入試環境としては追い風の状況になっている。
各大学の志望動向
個別の大学の動向に触れていこう。次頁の<図表3>は、国公立大前期日程の模試志望者の前年比の一覧である。
北海道・東北地区の状況を見ると、旭川医科大の志望者数が前年比76%と大きく減少した。同大では、2027年度入試より二次試験で理科2科目を新たに課す。この影響か、北海道地区以外出身の志望者が半減した。東北地区では、弘前大を除き志望者が1割以上減少しており、地区として不人気の傾向が見られる。2026年度入試で志願者が前年から3割以上減少した弘前大では、志望者が前年比103%と増加している。この傾向が続けば、2027年度入試の志願者数は増加するだろう。
関東・甲信越地区の状況を見ると、東京大では前年比136%と大幅に増加している。実際の入試の頃には他大へ志望を変更する可能性があるものの、現時点では人気を集めている。同様に、新潟大でも志望者は増加した。この2大学は2027年度入試から前期日程の募集人員を減らす。東京大では5名減、新潟大では10名減となるので注意したい。一方で、筑波大や群馬大、千葉大は志望者が2割近く減少した。
北陸・東海地区では金沢大、岐阜大で志望者が増加した。2大学とも、2026年度入試では志願者が増加しており、現時点で人気は継続している。一方で、富山大や福井大、名古屋市立大では志望者が減少した。
近畿地区は大学全体で前年比99%となり、他地区と異なり、志望者の大きな減少は見られない。京都府立医科大や和歌山県立医科大などでは志望者が増加したほか、京都大、大阪大、大阪公立大といった大学でも志望者は微減にとどまっている。
中国・四国地区では島根大や岡山大、高知大で志望者が増加しており、人気を示している。一方、鳥取大は前年比74%と志望者が大きく減少した。なお、鳥取大は2027年度入試から第1段階選抜の実施得点の基準が上がる点(率にして67%→71%)や、前期日程で兵庫県枠が廃止される点に注意したい。第1段階選抜については広島大も実施倍率が5→3倍となる。模試段階では志望動向に大きな影響は見られないものの、入試本番では注意が必要だ。
九州地区では、大学間の差が大きい。九州大、宮崎大、鹿児島大では志望者が1割以上増加した一方、長崎大や熊本大では2割以上の減少となっている。宮崎大では2026年度入試で志願者が前年比32%まで落ち込んでいた反動もあるため、入試本番でも志願者増加の可能性が高い。
後期日程の動向も確認する<図表4>。後期日程を実施する全大学で志望者は減少している。なかでも浜松医科大や山口大で減少率の高さが目立つ。現段階で後期日程の志望校を絞り込めていない受験生や、受験を想定していない受験生が増えていると言える。また、後期日程は特に上位層を中心に志望者が減少しているのも特徴である。
志望校検討の際の注意点
前期日程は医学科のメイン入試であることから、入試本番の志願動向は入試変更点や前年度の入試結果の影響を受けやすい。特に前年度入試の反動が予想される大学には注意が必要だ。志願者が大きく減少した大学は狙い目に見られることが多く、来春入試では志願者が増加する可能性が高い。2026年度入試の前期日程では、先述の弘前大や宮崎大のほか、富山大や群馬大、和歌山県立医科大などで志願者が大きく減少した<図表5>。これらの大学では2027年度入試で志願者増・倍率アップにより、前年より厳しい入試となることが予想される。志望校の状況を冷静に確認したうえで受験校を決定してほしい。
後期日程は近年の縮小の影響もあり、志願者全体も減少傾向にある。依然として前期日程と比べて倍率は高いものの、以前よりも合格できるチャンスをつかみやすくなっている。医学科合格のためにも、後期日程まであきらめずに出願を検討してほしい。
私立大
私立大志望者は減少も、成績中位層は増加
私立大についても志望動向を見ていく。第2回全統共通テスト模試における志望者数は前年比97%と、国公立大の志望動向と比較すると減少率は小幅にとどまった<図表6>。
偏差値分布を見ると、偏差値67.5以上の高成績層と偏差値52.5以下の成績層が減少していることがわかる<図表7>。前年と比べると、志望者の成績層は55.0~65.0に集中しており、前年より受験生の学力差が小さいと言える。この状況が続けば、自身の合格までの立ち位置も変わりやすいため、入試本番に向け、引き続き努力を継続してほしい。
各大学の志望動向
国公立大と同様、個別の大学の動向に触れていこう。<図表8>は私立大の模試志望者の前年比の一覧である。
東北の2大学を見ると、東北医科薬科大の志望者の減少がやや目立つ。東北医科薬科大では2027年度入試より、これまでの修学資金枠を変更する。ただし、志望者の減少が大きいのは変更のない一般枠である。
関東地区の状況を見ると、志望者が増加している大学が複数ある。特に慶應義塾大や東京慈恵会医科大で志望者が大きく増加した。両大学とも大きな入試変更点はなく、純粋に人気を集めている。東京女子医科大では志望者が前年比103%となった。2027年度入学者より学費の値下げを発表している。なお、東京女子医科大では総合型選抜の新規実施により一般選抜の募集人員を72名から50名へと減らす。2027年度は厳しい入試となるだろう。同様に日本大も今模試では志望者が増加しているが、一般選抜の募集人員が11名減となる点に注意したい。
志望者が減少した大学を見ると、昭和医科大では2割減と減少率の高さが目立つ。昭和医科大では2027年度入学者から通学キャンパスが富士吉田から鷺沼へ、さらに旗の台へと2度変更することになる。このほか、順天堂大や東京医科大などでも志望者が減少した。
北陸・東海地区では2大学で志望者が増加した。藤田医科大は志望者増となった一方で、愛知医科大は志望者減となっており、愛知県の大学の動向に差が出た。
近畿・中国地区では、関西医科大を除く各大学で志望者が増え、増加幅も目立っている。唯一志望者が減少している関西医科大もメイン入試である一般方式の志望者は前年並みとなっており、地区全体で医学科人気が高い様子がうかがえる。特に川崎医科大は全国で最も志望者の増加率が高くなっている。
九州地区は3大学とも志望者が増加した。2027年度入試より共通テスト方式を新規実施する久留米大では志望者が1割近く増加した。なお、久留米大では共通テスト方式の実施に伴い、一般方式の募集人員が減少する。
志望校検討の際の注意点
私立大入試は第一志望校だけでなく、併願校も検討する場合が多い。そのため、各大学の試験日の変更も入試の動向に影響を及ぼす。特に近年は、学科試験を2月以降に実施するルールを遵守するよう求められていることから、これまで一次試験を1月に実施していた大学が2月実施へと変更する動きが強まっている。例年、一次試験の日程が重複しない大学に志願者が集まりやすい傾向にある。2027年度は2/1~4に試験を実施する大学が集中している。一方、2/5や2/6に一次試験を実施する大学はそれぞれ1大学ずつとなっており、入試本番では志願者の集中が予想される。
このほか、国公立大と同様、入試変更点や前年度の入試結果も確認しておきたい。特に先述した東京女子医科大の学費の値下げのように、受験生がメリットを感じやすい変更を行う大学では、志願者の増加が見込まれる。反対に募集人員が減少する大学は、前年同様の志願者数であっても倍率が上昇する。募集人員の変更は入試科目の変更点などと比べて気が付きにくい変更点である。志望校検討の際には注意したい。
医学科合格に向けて
ここまで、来春の受験環境と動向に影響を与えそうな入試変更点などを見てきた。冒頭のとおり、来春の医学科入試は志望者の減少により競争の緩和が期待できそうな状況にある。現時点では合格圏内に一歩届かない受験生も、今後の成績の伸び次第では合格をつかみやすくなるとも言えるだろう。
2027年度入試の変更点の一つに募集人員の変更があり、これには国の方針が関係している。厚生労働省は、2027年度から医学科の入学定員(臨時定員)を段階的に減員する方針を示しており、臨時定員を継続しない、または前年より縮小して継続するなどの対応をとる大学もある。1大学あたりでは数名程度の減少にとどまる場合が多いが、合格者数の減少につながる可能性は否定できない。医学科志望者の減少により、2027年度入試で競争激化の様子は見られないものの、引き続き学力の完成度を高める努力が必要だ。
なお、医学科入試は学科試験だけでなく面接試験の対策も欠かせない。面接の評価によっては、試験の成績にかかわらず不合格とする旨を明言している大学も少なくない。面接対策にあたっては、大学がどのような人材を求めているかを理解することが極めて重要だ。各大学のアドミッション・ポリシーは大学Webサイトや学生募集要項等に記載されているので、併せて確認してほしい。
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