教育関係者のための情報サイト

    公開日
  • 2023年07月31日

この記事をシェアする

総合型選抜と学力保障(立命館大学) 入学センター事務部長 熊谷 秀之氏

学部が指定する単元の修得が
総合型選抜の出願条件に -UNITE Program-

この記事のポイント!
AI教材の修得認定試験により基礎学力を担保
入学後に必要な学びを単元レベルで明示
高いモチベーションと基礎学力を兼ね備えた学生が入学

総合型選抜における課題をクリアする
 「UNITE Program」を導入

立命館大学では、一部の総合型選抜で、学部指定単元をAI教材で学習するプログラム「UNITE Program」を導入し、その修了試験合格を出願要件としています(注)。

「UNITE Program」導入の背景には、従来の総合型選抜での基礎学力評価における課題があります。

総合型選抜では、意欲の高い学生を獲得できるメリットがありますが、入学後に学生がやりたいことを実現するには、意欲だけではなく基礎学力も必要です。これまでの総合型選抜では、主に高校の調査書をもとに、高校での科目の履修有無や成績の状況を確認し、基礎学力を評価していました。しかし、必ずしも修得できているとはいえない状況でした。

入学後の学びに必要な知識は教科・科目単位なのか、ということにも疑問を感じていました。たとえば、経済学部では数学的な素養が必要だといわれますが、高校で履修する「数学」すべての知識が必要かというと、そうではありません。もっと細分化することができるのではないか、必要な単元は学部によって異なるのではないかと感じていました。

さらに、近年はオンライン学習を取り入れた高校や、IB認定校、海外の学校など、多様な環境で学んだ高校生が増えています。これらの学校では学習指導要領にとらわれない教育が行われています。本学ではこうした多様な生徒を受け入れつつ、かつ基礎学力を担保する手段はないかと考えていました。さまざまな方法を模索するなかで、解決方法の1つとして当てはまったのが、AI教材なのです。

(注)1年目となる2023年度入試では経済学部・スポーツ健康科学部・食マネジメント学部の3学部(数学を単元指定)で実施。2年目となる2024年度入試では、新たに薬学部が加わり(化学を単元指定)、4学部に対象を拡大。

図表1 プログラム受講から合格発表までの流れ(2023年度入試)
[プログラムの受講]Step1 プログラム出願、Step2 指定単元の学習。[総合型選抜(AO選抜)の受験]Step3 AO選抜出願、Step4 入試選考、Step5 合格発表。
  • 立命館大学ご提供資料をもとに河合塾で作成

入学後に重要となる単元を学部ごとに指定

「UNITE Program」では、受験を希望する生徒が、各学部が指定する科目・単元をAI教材で学習します<図表2>。AIは生徒の理解度を診断して、つまずきの原因となる箇所までさかのぼって復習できる個別最適化された教材を提示します。単元ごとに、学習を終えると修得認定試験を受け、指定されたすべての単元の試験に合格した生徒のみが、総合型選抜に出願できます。試験は何回でも受けられますが、不合格だと単元の学習からやり直しとなります。プログラムの受講は無料で、途中でやめることも自由です。

なお、各学部が指定する単元は、それぞれの学部が議論を重ね、本当に欠かせない単元に絞っています。学習量は、5月にプログラムに出願し、1日1時間30日間勉強した場合、修得認定試験に3回チャレンジできるくらいの量としました。

このプログラムによって、必要な単元を修得すれば、だれでもエントリーできる選抜を実現することができました。

実際、プログラム受講者の12.8%にあたる29名が、普通科(全日制・単位制)以外の高校・コースに所属する受講生であり、目的の1つとして掲げていた受講者の多様性担保は達成できたといえます。

図表2 「UNITE Program」学部ごとの指定単元 (2023年度入試)
「UNITE Program」学部ごとの指定単元 (2023年度入試)
  • 立命館大学ご提供資料

多くの生徒が何度もチャレンジして合格
 学力不安を払拭し大学で学ぶ意欲が明らかに

この修得認定試験に合格することは、あくまで出願条件にすぎず、合否は書類審査やプレゼンテーション、面接等によって決定します。プログラムの受講で得られるものが出願資格だけなので、どのくらいの人数が応募してくれるかわからず、初年度は3学部合わせた募集人数が25名と、スモールステップで始めました。しかし、実際には受講者、修了者ともに本学が想定していた2倍以上となりました<図表3>。

プログラムを修了し、入試に出願した受験生は意欲も高く、募集人数を大きく上回る37名が合格しました。また、修得認定試験に何度もチャレンジする、モチベーションが高い生徒が多く見られました。

AI教材を課すだけではこのような結果にはならなかったと思います。大学側が「やりたいことを実現するために必要な素養はこれだ」と単元単位で示すことで、高校までの学習が入試だけでなく、大学入学後の学びにどうつながるのか具体的にイメージを持つことができ、学ぶことへの納得感が生まれ、生徒の動機づけにつながったということだと理解しています。

また、学習履歴を可視化できたこともよかった点でした。AI教材による学習履歴を見ると、合格した生徒は、計画的に学習する力があることがわかりました。「UNITE Program」を通じ、学習習慣が身についている学生に入学してもらうことができたといえます。

図表3 UNITE Program・総合型選抜(AO選抜)実施結果(2023年度入試)
UNITE Program・総合型選抜(AO選抜)実施結果(2023年度入試)
  • 立命館大学ご提供資料

修得主義にもとづく未来志向入試を拡大

このプログラムを導入した大きな理由として、未来志向の選抜でありたいという思いがあります。

評定値や科目の履修歴など過去の実績を出願条件とするのではなく、受験生が努力すれば平等にチャレンジできる入試が望ましいのではないでしょうか。

評定値や履修歴を基礎学力担保のよりどころとすると、どんどん間口は狭くなります。意欲があり、必要な知識を兼ね備えた高校生に平等な機会を与え、多様な人材を確保したいと考えていますし、社会でイノベーションを起こす人材の育成に多様性の確保は欠かせません。

初年度「UNITE Program」を導入した3学部では、この方式に手ごたえを感じています。引き続き、募集枠や他学部での導入も拡大していきます。

今後も、基礎学力を担保した上で、これまで何らかの理由で本学の入試にアプローチできなかった生徒を受け入れるための手法を模索し、入学後、そして社会で活躍できるような学修環境を追求していきたいと考えています。

関連リンク

この記事をシェアする

PAGE TOP