- 2025年06月23日
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2025年度入試 医学科入試結果総括
Part1 国公立大
2025年度入試は新課程入試初年度であること、18歳人口が増加に転じたことなど、例年と異なる環境の変化があった。大学全体の動向として志願者数は増加、合格者数は減少となっており、厳しい入試となった大学もみられた。しかし、医学科だけでみると、国公立大(前期)では志願者数は減少、私立大では前年並みとなった。合格者は国私ともに前年並みにとどまっており、競争緩和といえる入試となった。
この記事では、国公立大医学科の2025年度入試結果、および2026年度入試の変更点・トピックスについて詳しく解説する。
私立大のレポートはこちら 2025年度 医学科入試総括 Part2 私立大
志願者は前期日程・後期日程ともに減少、倍率もダウン
国公立大入試の中心となる前期日程の志願者数は15,307人(前年比96%)と減少した<図表1>。

国立大、公立大に分けると、国立大で前年比98%となった一方、公立大では同82%と大きく減少した。福島県立医科大や大阪公立大で志願者が大きく減少したことで公立大全体の志願者減に大きく影響を及ぼした。志願者数が減少した一方、前期日程の合格者数は前年並みとなっており、倍率をみると前年の4.3倍から4.1倍へダウンした。
<図表2>のグラフは、過去10年間の志願者数、倍率(志願者÷合格者、以降も同様に算出)の推移をみたものである。

前期日程では近年、志願者の増加が続いていたが、今春入試では5年ぶりに減少した。今春は共通テストの平均点は上昇したこともあり、出願直前での他系統への流出は多くなかった。後期日程は今春入試も縮小の動きが続いていることなどから2年連続の志願者減となった。倍率もダウンしたが、募集人員が少ないことから、依然として厳しい入試である。
大学別の入試結果
次に大学別の入試結果をみていく。国公立大の志願動向は前年の志願者数増減や、入試科目・配点、2段階選抜の新規実施・倍率などの入試変更の影響を受けやすい。とくに大学よりも系統にこだわりが強い医学科では、こうした影響による志願者数の変動が顕著だ。
具体的な例を見ていこう。 <図表3>は今春入試で志願者数の増加率・減少率が大きい大学を並べたものである。

前期日程全体の志願者数は前年比96%と減少していたが、とくに減少が目立つのは福島県立医科大(前年比37%)、三重大(同42%)、信州大(同62%)、山口大(同63%)、旭川医科大(同65%)などである。河合塾「入試結果調査データ」でみると、福島県立医科大では地元(東北地区)以外の地区の受験生が減少していた。近年、同大では志願者数が1年おきに増加、減少を繰り返す隔年現象が続いており、今春は増加の年にあたっていた。他地区の受験生を中心に警戒されたものとみる。山口大も福島県立医科大と同様の状況となっている。三重大や信州大は前年度入試で志願者が増加した影響で、旭川医科大は第1段階選抜の実施倍率変更(5.0倍→4.0倍)が影響し、それぞれ志願者が減少した。
一方で志願者が増加した大学もみていくと、富山大(前年比253%)、鳥取大(同197%)、徳島大(同153%)、宮崎大(同153%)などがみられるが、これらは前年度入試で志願者が減少した大学で、とくに富山大の前年度入試は前年比53%と半減しており、その反動により今春は大幅な志願者増となった。来春出願を検討する際には、前年の志願者数、倍率のみで判断しないようにしたい。とくに今春入試で志願者が減少した大学は来春、志願者が集まる可能性が大きいため、注意が必要である。
このほか、今春入試で大きなトピックのあった大学の動向も確認しよう。弘前大では今春入試から前期日程の2次試験の総合問題を学科試験(英語・数学)に変更した。同大は前年度入試も志願者増となったが、今春も志願者数が前年比124%と増加が続いた。対策のしやすさから志願者が集まったものとみる。名古屋大では前期日程の2次試験で国語の出題を取りやめた。こちらも前年度志願者増となっていたが、今春も前年並みを維持した。このように、入試科目の変更は志願者の増減につながりやすい。
国公立大医学科合格に必要な学力
次に、国公立大医学科の合格に必要な学力をみておこう。
まず共通テストの成績について確認しておく。今春入試は新課程入試初年度を迎え、共通テストでは新教科「情報」の出題や一部教科・科目の出題範囲の変更などがみられた。<図表4>は、国公立大医学科受験者(前期日程)の共通テストの平均得点率を合格者・不合格者で切り分けてみたものである。グラフの外側の濃いチャートが合格者、内側の薄いチャートが不合格者の平均得点率を示す。

合格者の平均得点率をみると、総合(6教科理系:英語・数学①②・国語・理科2・地公・情)の得点率は86%となった。共通テストの難易度は年度によって変わるが、医学科合格の目安として8割以上の得点率をめざすと良いだろう。教科ごとにみていくと、「英語」や「数学」など理系の主要科目では9割近い得点率となった。新教科「情報」は今春、平均点が高い教科であったが、医学科合格者も高い得点率となった。
2次力についても確認しておく。<図表5>は、国公立大医学科受験者の平均偏差値を、合格者・不合格者で切り分けてみたものである。グラフの外側の濃いチャートが合格者、内側の薄いチャートが不合格者の平均偏差値を示す。

合格者の平均偏差値をみると、総合(英・数・理から2~3教科)では67.7となっている。教科別にみても高い2次力が求められることがわかる。また、合格者と不合格者で比べると、数学、理科で差の開きが大きく、ここで差がついた様子がうかがえる。とくに理科は、国公立大医学科の多くが2科目を課すため、共通テスト同様、2科目めをいかに仕上げられるかが合格の鍵となりそうだ。
2026年度入試のトピックス
最後に来春入試の変更点を確認していこう。まず、来春の一般選抜では旭川医科大、山形大、佐賀大で後期日程を廃止する。これにより周辺で後期日程を実施するのは、北海道・東北地区では秋田大、九州地区では宮崎大、鹿児島大、琉球大のみとなる。これらの大学では後期日程で志願者の集中する可能性がある。各大学の選抜方法は7月末までに公表される「入学者選抜要項」で明らかになるので最新情報はこちらで確認してほしい。
まとめ
以上、国公立大医学科の2025年度入試の状況をお伝えした。来春の18歳人口は今春並みに落ち着く。加えてこの春の河合塾実施の模試では医学科の志望者は概ね前年並みとなっており、医学科志望者でみても来春は難化要素は見当たらない。しかし、依然として医学科入試は狭き門であり、入念な受験準備が必要だ。最後まで粘り強く戦う体力・精神力も必要となってくる。
また、来春入試は新課程2年目の入試となる。共通テスト「情報」をはじめ、出題範囲・傾向が変わった教科の出題状況もみえてきた。国公立大志望者を中心に対策を立てやすくなっていることだろう。環境が向かい風でない今、努力が報われやすくなっている。目の前にある課題をひとつずつクリアしていき、医学科合格にむかって努力を続けてほしい。
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