- 2025年06月23日
この記事をシェアする
2025年度入試 医学科入試結果総括
Part2 私立大
2025年度入試は新課程入試初年度であること、18歳人口が増加に転じたことなど、例年と異なる環境の変化があった。大学全体の動向として志願者数は増加、合格者数は減少となっており、厳しい入試となった大学もみられた。しかし、医学科だけでみると、国公立大(前期)では志願者数は減少、私立大では前年並みとなった。合格者は国私ともに前年並みにとどまっており、競争緩和といえる入試となった。
この記事では、私立大医学科の2025年度入試結果、および2026年度入試の変更点・トピックスについて詳しく解説する。
国公立大のレポートはこちら 2025年度 医学科入試総括 Part1 国公立大
志願者は前年並み、一期入試は前年踏襲の入試環境
次に私立大入試の状況について確認する。私立大医学科全体の志願者数は105,846人(前年比100%)、合格者数は6,888人(同99%)とともに前年並みとなった<図表6>。

方式別に分けると様相が異なり、一般方式では合格者数が減少したことで倍率がややアップしたが、共通テスト方式では志願者数の増加率以上に合格者数の増加率がアップしたことで倍率がダウンする形となった。また期別でみると、二期入試では志願者の増加が続いており、倍率もアップした。メイン入試である一期入試の倍率は前年並みに落ち着いており、今春は前年と同程度の入試環境だったといえるだろう。
大学別の入試結果
大学別の入試結果を特徴がある大学を中心にみていく。埼玉医科大では志願者数が前年比137%と増加が目立った。なかでも一般入試前期では前年比165%と増加の中心となった。同方式の今春の1次試験日は、首都圏では東邦大と重なっていた。東邦大の志願者数は一般入試で前年比74%と減少しており、今春は埼玉医科大に多くの志願者が集まったものとみる。このほか、福岡大や名称変更した昭和医科大で志願者が増加した。一方、志願者数が減少した大学をみると、先ほどの東邦大のほか、杏林大、東北医科薬科大など5大学で志願者が1割以上減少した。多くの大学は前年度入試で志願者が増加しており、国公立大同様、前年の志願者数、倍率のみで判断しないようにしたい。
次にトピックのあった大学の状況を確認する。獨協医科大では今春入試より、共通テスト方式を廃止し、一般入試後期の募集人員を増員した。加えて、1次試験の会場も栃木会場から東京会場に変更したこともあり、同方式の志願者数は前年比120%と増加、大学全体でも志願者は前年並みにとどまった。一方、共通テスト方式を新設した聖マリアンナ医科大では、募集人員5名の同方式に519人の志願者が集まった。倍率(志願者÷合格者)は103.8倍と飛びぬけて高い倍率となり、かなりの狭き門だったといえる。共通テスト方式で教科「情報」を唯一必須にした藤田医科大では同方式の志願者数が前年比103%と増加、負担増の影響はみられなかった。主に国公立大志願者の併願先として志願されたものとみる。
来春も一部の大学で入試変更・トピックがみられる。とくに受験生に有利となる入試変更などは志願者から注目を集めやすく、厳しい入試となることもあるため注意したい。
私立大医学科合格に必要な学力
<図表7>は私立大医学科受験者の平均偏差値を、合格者・不合格者で切り分けてみたものである。グラフの外側の濃いチャートが合格者、内側の薄いチャートが不合格者の平均偏差値を示す。

合格者の教科別の平均偏差値をみると、科目間の偏りはほとんど見られず、バランスよく高い学力が求められることが分かる。合格者と不合格者で最も差がついた科目は私立大でも理科であり、9.3ポイントの開きが生じている。
2026年度入試のトピックス
私立大では1次試験の試験日を遅らせる大学が増える。文部科学省の大学入試におけるルールブック(大学入学者選抜実施要項)では、これまでも教科・科目に係る選抜については原則2月1日以降と定められていたが、一部で2月1日より前に試験を行っていた大学もあった。昨年末に改めて各大学に試験期日を遵守するよう通知されたこともあり、来春入試では、これまで1月に試験を行っていた大学が2月以降に試験日を変更する動きがみられる。医学科では、現時点で、獨協医科大、北里大、杏林大、金沢医科大、川崎医科大が1次試験日を2月以降に変更する。これにより大学同士の試験日が重なるケースが例年以上に増えるとみられ、受験スケジュールを丁寧に組む必要がある。
試験日以外の変更点・トピックをみると、自治医科大が富山県出身者を対象とした学校推薦型選抜および、富山県、山梨県、山口県、佐賀県の4県出身者を対象とした総合型選抜を新たに実施する。同大だけでなく、昭和医科大では公募制の学校推薦型選抜、兵庫医科大では総合型選抜(エキスパート養成)を新規実施するなど、来春も総合型・学校推薦型選抜の拡大が続く。北里大では共通テスト方式を新設する。後期日程として実施されるが、他大の後期(二期)入試は募集人員が少ないため高倍率となるケースが多く、同大でも厳しい入試が予想される。なお、方式の新設に伴い、一般入試前期の募集人員が10名減となるため、こちらも注意したい。入試以外では藤田医科大が来春入学者より6年間の学費が約30%引き下げとなる。直近では、2023年度に大阪医科薬科大が学費の値下げを発表、初年度の入試では志願者が大きく増加した。同大についても値下げに加え、今春入試で大学全体の志願者数が減少したこともあり、志願者の集中が見込まれる。
まとめ
以上、私立大大医学科の2025年度入試の状況をお伝えした。来春の18歳人口は今春並みに落ち着く。加えてこの春の河合塾実施の模試では医学科の志望者は概ね前年並みとなっており、医学科志望者でみても来春は難化要素は見当たらない。しかし、依然として医学科入試は狭き門であり、入念な受験準備が必要だ。最後まで粘り強く戦う体力・精神力も必要となってくる。
また、来春入試は新課程2年目の入試となる。共通テスト「情報」をはじめ、出題範囲・傾向が変わった教科の出題状況もみえてきた。国公立大志望者を中心に対策を立てやすくなっていることだろう。環境が向かい風でない今、努力が報われやすくなっている。目の前にある課題をひとつずつクリアしていき、医学科合格にむかって努力を続けてほしい。
国公立大のレポートはこちら 2025年度 医学科入試総括 Part1 国公立大
- 関連コンテンツ
-
- 大学入試情報 これまでの入試
- 大学入試情報 これからの入試
- 2040年問題と医療・福祉系学部の今後(河合塾レポート)
- 医学部をめざす(河合塾ホームページ)
大学別の入試結果(志願者数・受験者数・合格者数・倍率)や、国公立大の合格最高点・最低点・平均点一覧、各種集計データなどをご提供しています。
各大学の2026年度入試変更点、予想入試難易度(ボーダーライン)などをご提供しています。
2040年、医療・福祉分野の担い手不足が深刻化します。医療・福祉分野の人材受給の現状、医学部定員削減や地域枠の恒久定員化について解説しています。
毎年多くの医学部合格者を輩出する河合塾の視点から、医学部受験生向けの大学情報・受験対策・イベント情報などをまとめてご紹介します。
この記事をシェアする