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    公開日
  • 2026年04月06日
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河合塾講師に聞く!志望理由書指導で
生徒の自己理解を深める
3つのステップ

総合型・学校推薦型選抜の拡大で増える、志望理由書などの添削指導。「目的意識が薄い」「定型文が目立つ」などの課題に、生徒一人ひとりの自己理解をどう深め育てていくかお悩みの先生方も少なくありません。そこで今回は河合塾で多くの塾生を合格に導いてきた広川徹先生、加賀健司先生に、志望理由書の書き方の前に押さえておきたい指導のポイントを伺いました。

借りてきた言葉になりがちな志望理由書

—総合型・学校推薦型選抜が拡大する一方で、明確な目的意識を持たない生徒も多いと聞きます。
実際の指導現場ではどう感じていますか?

加賀  確かにチャンスが増えればよいと受験する生徒もいます。また、たとえば看護職志望で職種は決まっていても「なぜその大学なのか」という理由付けが不十分で、大学側が期待する水準に達している生徒はそれほど多くないと感じています。

—目的意識が明確でないと、どんな問題があるでしょうか。

加賀  そうした生徒たちは、大学入学後、アカデミックな問題やリサーチクエスチョンとして何を扱うかという意識自体が希薄です。そのため、生徒の問題意識をどう広げ、そこからどう絞り込んでいくかという指導に非常に苦労します。また、学校での探究活動から他の可能性へ目を向けないまま、一直線で進んでしまうケースも問題ですね。

—高校生に大学入学後を意識してもらうのは難しいですね。

広川  高校生と大学生の『距離』が非常に遠いと感じています。高校生は、大学生活や勉学環境を具体的にイメージできず、大学の組織編成や研究内容などの知識もないことが多い。高校生は自分がどこで何をしたいかなど、基本的なスタンスが定まっていないことも少なくありません。その結果、現在の自分と大学入学後の自分を結び付けて考えられず、借りてきた言葉で書いてしまう生徒も多いわけです。

加賀  指導現場では「合格した生徒はどう書いていたか」を教えるのが最も簡単です。ただし、テンプレ的な志望理由書が増えてしまう。こうした指導では生徒自身の志望理由や本音を深掘りできないため、面接試験になると自分の言葉で話せないといった問題が起こるのです。

志望理由書の意義と書くべき5つの要素とは

—そもそも志望理由書で大学が求めるものって何でしょうか。

広川  まずは生徒本人が「自分はどういうものか」をわかっている、自己理解が重要です。なぜなら大学側は、自分の希望を実現できる能力つまりポテンシャルが受験生にあるかを「志望理由書」で確認したいからです。

そのうえで、大学生活をやり抜くポテンシャルを実践で試すために「小論文」、改めて本人にポテンシャルを語らせる「面接」を実施する。つまり、ポテンシャルをアピールするのが志望理由書で、それを実証するのが小論文、改めて語らせるのが面接、いわば『三位一体』の関係というわけです<図表1>

<図表1>志望理由書、小論文、面接の役割
志望理由書、小論文、面接の役割

—とすると志望理由書に書くべき内容は実は志望理由だけでない?

広川  募集要項などを見ると、単に志望理由を書くだけではないことがわかります。基本的には①志望理由、②本学志望理由、③学習計画、④将来の抱負、⑤自分のポテンシャルという5つの要素を、過去の経験を交えながら書く必要があります<図表2>

<図表2>志望理由書に書くべき内容
志望理由書に書くべき内容

—大学進学後のイメージまで!いつから始めるのが理想的でしょう?

広川  早い方がよいですね。本人の自己理解から出発する以外、自分だけの志望理由は作れないですから時間が必要です。一人ひとりの生徒への個別指導にもなる。ただ、パターンは限られるため、それほど多様性の海に溺れる心配はありません。一定のプロセスを経験すれば、生徒本人が『輪郭』を取ることはさほど難しくありません。思考力・表現力ワーク付録の『じぶんみらいデザイン 志望理由書準備BOOK』はそのためのツールとして開発しました。

出発は本人の自己理解から-じぶんみらいデザインのSTEPとは

—“じぶんみらいデザイン”というネーミングの意図は何ですか?

広川  生徒本人が自分自身を“デザイン”することが重要です。先生や親がレールを敷いても意味はないのでデザインするツールを与え、本人に考えて組み立ててもらうことで高校生から受験生になった生徒に対して指導が始められるよう意図しています。生徒が自分の輪郭付けをすることで、高校の先生方も対話ができるようになるはずです。

<図表3>じぶんみらいデザイン 志望理由書準備BOOK
じぶんみらいデザイン 志望理由書準備BOOK

—このツールを利用する時期は、いつごろが適切でしょうか?

広川  遅くとも高校2年くらいから始める必要があります。自分をデザインする時間、いわゆる自分探しの時間が必要で、高校3年の4月ごろからでは間に合わないからです。それだけ時間をかけて作り上げることで自分自身も明確な意識を持つことができ、面接でもしっかりと受け答えできるようになります。

—具体的にはどう考え、取り組んでいけば良いのでしょうか?

広川  大きく次の3つのステップで考えます<図表4>

<図表4>志望理由書に取り組む3つのステップ
志望理由書に取り組む3つのステップ

STEP1では「現在の自分」に加え自分と社会との接点を探り、考えていく点が特長です。『人』『環境』『しくみ』の3つの角度から考えることで自分なりの社会のイメージを意識できます。STEP2では「現在の関心」として学部・学科、大学について、STEP3では大学入学後の学習計画や将来の抱負など「将来のビジョン」について考えます。4つのワークに取り組みながらこれらを進め、志望理由を考える材料を揃えていきます。

—生徒たちには共通のワークシートに記入してもらうんですね。

広川  学年やクラス単位で指導する場合、共通のワークシートを利用することで生徒集団の特性を立体化して把握でき、先生方には便利です。生徒の強みや弱みも見えてくるので、データを蓄積・比較する面でも共通化は有効ですし、集まれば将来的に大きなデータベースになる可能性もありますね。

<図表5>共通のワークシートで蓄積・比較
共通のワークシートで蓄積・比較

—STEP2「現在の関心」を具体化するのに何が必要でしょうか。

広川  高校と大学をつなぐ『パイプ』をいくつか作ることです。具体的には大学のオープンキャンパスには必ず行かせてほしいですし、卒業生である大学生を呼び大学生活について話してもらう。特に卒業生は高校にとって活用しないともったいない貴重なリソースです。さらに、最近だと生成AIの活用もそうですね。

加賀  オープンキャンパスや生成AIは積極的に活用すべきですね。生成AIがない時代は生徒個人や学校の先生方の情報収集能力に左右される、不公平な環境だったと思います。しかし現在は、AIで検索したりオンラインでオープンキャンパスに参加したり、意欲さえあれば以前より格段に多くのことができる環境になったと思いますね。

—STEP3「将来のビジョン」を構想する際、工夫できることはありますか?

加賀  まずは自分の希望にあわせて、さまざまなことを調べてもらうことから始めてはどうでしょうか。高校生は大学での学修計画や卒業後の進路状況など知らないことが多いので、たとえば医療系志望なら、身近な人以外の多様な医療従事者の存在に目を向けさせ、いかに視野を広げていくかを重視してお話するようにしています。

—最近は志望理由書のAI添削ツールなどもあるなか、手間をかける理由って?

広川  確かに最近は生徒のプロフィールを読み込ませれば、おすすめの大学候補とその理由を挙げてくれるAIサービスもあります。生徒が志望理由を考えるヒントになりますし、先生にも先にAIを利用して準備しておけば、生徒への指導もより効果的になるでしょう。

ただし、AIに入力する元ソースが曖昧では、添削させても結果はどれも同じものになりがちです。結局、借り物の志望理由にしかなりません。生徒本人の自己理解から出発していればその生徒だけのものになります。大学側も生成AIで書いたと思われる志望理由書は減点することもあるため、生徒本人発の内容が不可欠なのです。

加賀  AIサービスを使うとしても質問の仕方が適切でなければ意味がありません。たとえば「看護系に行きたい」と漠然とした質問では適切な回答は得られないため、どんな切り口で質問するかを事前に準備しておく必要があります。今回の『じぶんみらいデザイン 志望理由書準備BOOK』は、そのための材料を生徒が準備できるツールでもあるんですよね。

生徒本人の言葉を引き出す良い機会に

—最後に、高校の先生方にメッセージをお願いします!

加賀  先生方には、今回作成したツールを生徒本人の『自分語り』を引き出すよい機会にしてもらえると嬉しいですね。指導上、学びみらいPASSや教科試験の点数など量的評価で把握するに留まりがちですが、志望理由書や自己推薦書は結局生徒さんの言葉を引き出して紡いでいくところが重要だと思うんですよね。

広川  そのとおりですね。先生方も生徒の声を実はしっかり聴けていないのかもしれない。生徒本人が自分の言葉で語ってくれることは、教師冥利に尽きることだと思います。一人ひとりの生徒と短い時間でも向き合えるツールとして『じぶんみらいデザイン 志望理由書準備BOOK』をご活用いただけると大変喜ばしく思います。

広川徹(ひろかわ・とおる)

広川徹(ひろかわ・とおる)

広川徹(ひろかわ・とおる)


プロフィール

河合塾講師。2022年度まで長年、小論文科講師として授業運営や模試作成、カリキュラム策定等に携わる。思考力・表現力シリーズなどの教材監修も務める。塾生からの信頼も厚い。共著に『医学・医療概説』『医学部の小論文』(ともに河合出版)がある。

加賀健司(かが・けんじ)

加賀健司(かが・けんじ)

加賀健司(かが・けんじ)


プロフィール

河合塾講師。小論文科で自然科学系、医系・看護系小論文のほか、理科(生物)や情報科の授業を中心に活躍。思考力・表現力シリーズプロジェクトチーフを兼務。愛犬はこうちゃん・ふくちゃん。共著に『医学・医療概説』『看護系学部の小論文』(ともに河合出版)がある。

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