- 2026年01月13日
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一般選抜による入学が半分を割り込み、総合型・学校推薦型選抜の拡大が続く大学入試。「明確な目的意識がない生徒に志望理由をどう書かせれば」「リーダーシップやコミュニケーション能力ばかり並ぶ自己PRをどう指導すれば」―そんな悩みを抱える先生方も多いことでしょう。この記事では、2025年12月開催オンラインセミナー「理想をあきらめない年内入試対策」の講演内容から、指導実践に役立つポイントをお伝えします。
第1部 「年内入試」の動向と学校現場の対応
第1部は、進学情報誌Guideline編集部より、「年内入試」の動向と学校現場の対応について。総合型・学校推薦型選抜の最新動向とともに、朝日新聞×河合塾共同調査「ひらく 日本の大学」2025年度調査の結果から、大学は総合型・学校推薦型選抜をどう考えているか、高校ではどのように対応しているかを報告しました。
詳しくは、 大学入試を追う 総合型・学校推薦型選抜のこれから をご覧ください。
第2部 「年内入試」にどう向き合うか
第2部では、河合塾 小論文科講師の加賀健司が、「『年内入試』にどう向き合うか」と題し、どんな生徒が総合型選抜を勝ち抜けるか、年内入試対策の理想や学校でどう指導すべきかについて具体的な実践例を紹介しました。本記事では講演内容のポイントをお伝えします。詳しく知りたい方は、期間限定公開中の動画もあわせてぜひご覧ください。
そもそも大学が総合型選抜を行うワケ
大学はなぜ総合型選抜を行うのでしょうか。それは学力試験だけでは測ることができない資質・能力、特に大学入学後に「自走することができる学生」かを見たい、「とがった学生」を確保したいと考えているからです。
とがった学生が欲しいとはいっても、単なる“おたく”のように「個人的関心」だけでは評価されません。それを学術的な「学界の関心」、実社会を意識した「社会の関心」との接点を持って意味づけることができてはじめて評価されるのです。「個人的関心」「学界の関心」「社会の関心」の3つが重なっている領域で、自分のやりたい事柄を意味づけすることができる状態が理想的と言えるでしょう。
「きっかけ」で志望理由を終わらせない
ところが実際の生徒は、そのような観点をあまり持っていません。例えば医学部をめざす方でも、志望理由を語る際に、病気やケガの体験など個人的な「きっかけ」だけで終わってしまう生徒がものすごく多いんです。「きっかけ」をもとに志望理由を考えていくには、「拡散と収斂」を繰り返す体験が必要となります。
つまり、生徒には、単に印象に残った体験を語るだけでなく「その体験はどんな意味を持つのか」「同じような苦しみを抱えている人はいないか」といった社会的な文脈へと拡散させて、社会への期待や興味に収斂させていく、「開いて閉じて」を繰り返す指導が必要になります。
さらに、さまざまな体験や探究学習を通して「この体験はどんなものだったか」「なぜこの体験が自分の中で印象に残っているのか」と考察していく「拡散と収斂」のプロセスを、折に触れて文章化(言語化)させてアーカイブとして作っておくと、生徒本人も自分の思考の過程を客観的に見直すことができてよいと思います。
「自分語り」自己推薦で押さえるポイント
大学が総合型選抜を行う理由として、「自分の言葉で自分を語ることができる学生」がほしいということもあります。相手にも伝わるように自分のことをプレゼンする「自分語り」として、一つはなぜ○○大学をめざすのかなどの「志望理由」、もう一つは自分の長所は何かなどの「自己推薦」が求められます。
自己推薦書で生徒がよく書くのが「リーダーシップ」と「コミュニケーション能力」です。ただし、予備校講師ですら辟易するほど多くの生徒が書いてくるので、大学の先生方はさらに辟易していると推定されます。例えば部員2名の部活動の副部長が「リーダーシップを培った」と書いても、それは説得力に欠けてしまうんですよね。
自己推薦ではその「内実」と「汎用性」が重要なポイントになります。
- 言葉を使わずに「内実」を説明する
- 多様な他者集団で「汎用性」がある
- 将来像への「飛びすぎ」に注意
「リーダーシップ」「コミュニケーション能力」などの言葉を使わず、その能力が具体的にどのようなものかを、生徒本人に説明してもらわないといけません。引っ張っていくだけがリーダーシップではないという視点も理解しておく必要があります。
例えば高校の部活動で培ったリーダーシップは、同じ目的を持つ均質な集団内のものに過ぎないことが多いです。しかし大学では、高校時代とは根本的に異なり、多様な学生がいる集団の中でその長所をどう発揮して生かせるか、つまり部活動以外のシーンで使える「汎用性」があるか、生徒に自己分析してもらうことが必要になるでしょう。
医学部志望者で多いのが「部活動で培ったリーダーシップとコミュニケーション能力を、チーム医療の中でも発揮したい」という記述。これは飛びすぎていて、将来の現場を理解していないと見なされるため好ましくありません。
これらの自己分析は、生徒が単独で行うには難しいかもしれません。学びみらいPASSなどのアセスメントで現状を客観的に把握するとともに、思考力・表現力ワーク付録の「じぶんみらいデザイン 志望理由書準備BOOK」を活用して、先生方が生徒の成長を見とり折を見て声をかけるなど、適切なサポートで応援することも必要でしょう。
こんな生徒が総合型選抜を勝ち抜ける!!
どんな生徒が総合型選抜を勝ち抜くことができるか、4つにまとめるとこうなります。
| 勝ち抜きポイント | 進路意識の状況 |
|---|---|
| 明確な目的意識を持つ | 志望理由の軸となるキャリア意識が固まっているか |
| 志望大学で学ぶ意欲を持つ | なぜこの大学なのかを具体的に語ることができる |
| 自己プロデュース能力が高い | 入学後の成長の階段を想定して「自走」できるか |
| 大学が求める人材(大学の社会的使命)とマッチする | 大学のアドミッション・ポリシーを早期に確認 自分の強みや能力とすり合わせができているか |
こんな生徒は総合型選抜に向いていない!かも
総合型選抜は、その性質上「向いている生徒」が積極的に使うべき制度で、向いていない生徒が無理に使うと苦労する可能性があります。
総合型選抜に向いていないかもしれない生徒の例は、次のとおりです。
| 向いていないポイント | 対応 |
|---|---|
| 目的が明確でない | 入学してから学びたいことを発見しよう |
| 第一志望ではない | 準備する労力が多すぎるため「無駄な時間」にならないようにしよう |
| 「売り」がなかなか出てこない | リーダーシップやコミュニケーション能力以外の強みを語れない場合は、教科学力を「売り」にしよう |
もし該当するものがあれば、教科学力を「売り」にして一般選抜に切り替えるのも得策です。先生方は、生徒が自分自身の興味関心と大学の募集要項などをすり合わせしながら、向いているのは一般選抜か、総合型選抜かを判断できるように促すことがポイントになるでしょう。
先生方の負担軽減のためにも、早い段階(例えば高校2年生のオープンキャンパスの時期)から大学情報を収集し、生徒自身が選抜方法の向き不向きを判断できるように誘導していくことも必要だと思います。
教科の勉強がおろそかになるのは避けるべき
総合型選抜、学校推薦型選抜での合格をめざす場合でも、教科の勉強がおろそかになることは、絶対に避けるべきです。小論文や総合問題で問われる内容も、ベースとなる基礎学力がなければ対応できないからです。
総合型選抜も学校推薦型選抜も、生徒の可能性を発見して開いていく制度ではないかと思います。もちろん指導の負担が大きく大変だとは思うのですが、合格していく生徒の姿こそが大きなやりがいにつながっているのではないでしょうか。大学によって求める学生像も異なるのでそれらも含め、先生方には学校の長所も生かしながらご指導いただけるとありがたいと思います。
【期間限定動画】「理想をあきらめない年内入試対策」全編
動画では、河合塾講師が実際に指導した生徒との具体的な対話例や質問例、合格までのスケジュール設計など学校でどう指導すべきかについて詳しく解説しています。先生方の日々の指導での活用をより具体的にイメージできるヒントが満載です。続きはぜひ動画にてご覧ください。
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