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    公開日
  • 2026年06月08日
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理系シフトの先に アセスメントから見る文理の特性

2040年には文系人材の余剰・理系人材の不足という推計を受けて、国を挙げた「理系シフト」が加速しています。そこで本企画では、「理系人材の育成」と「市民のための理数」の両面から、これからの高校教育について、河合塾の山口大輔と考えます。

  • この記事は、進学情報誌Guideline 2026年4・5月号変わる高校教育「理系シフトの先にー理系人材育成と市民のための理数ー」掲載記事より作成しました。

進学情報誌Guideline 2026年4・5月号(電子書籍版)

アセスメントテストで見る文系・理系の違い

『学びみらいPASS』の中には、ジェネリックスキルを測定するPROG-H、興味・関心から職業適性、学問適性を測定するR-CAP、キャリア意識などを調査するLEADSがありますが、これらのアセスメントテスト結果から文系希望者、理系希望者の違いを見てみました。

高校1年生時点での結果ですが、文系・理系でいくつか異なる特徴があることがわかりました。PROG-Hは、知識を活用して課題を解決する力(リテラシー)と経験を積むことで身についた行動特性(コンピテンシー)を測定しています。

平均値を比較すると、理系希望者はリテラシーが高く、リテラシーを構成する「情報収集力」「情報分析力」「課題発見力」「構想力」の4要素がすべて文系希望者よりも高くなっています。この4要素は、実社会で与えられた課題をどのように解決していくか、問題解決に至る思考のプロセスそのものと言えるものです。

また、リテラシーのレベルごとの分布を見ると、理系希望者は各レベルがほぼ均等に分布していることに対し、文系希望者ではレベル1、レベル2という低い層の割合が多くなっています。この分布の違いが文系・理系の平均値の差と言えるでしょう。

一方、コンピテンシーでは、全体的に大きな差は見られないものの、気になることをとことん調べないと気が済まないといった行動特性は、理系希望者の方が突出して高いことがわかりました。

R-CAPは、社会で活躍する社会人・学生約3万人の「興味・価値観・志向」に関するデータを基に診断するものです。生徒の興味・関心から見たパーソナリティタイプや、職業適性、学問適性などの結果が出ます。

高校1年生の春に受験したR-CAPのデータからは、パーソナリティタイプに文系・理系の違いが見られ、理系希望者は、「エンジニア」と「アナライザー」の志向を持つ割合が高いことがわかります<図>

<図>R-CAPにおける8つのパーソナリティタイプ(各生徒の1位のタイプを希望進路別に集計)
<図>R-CAPにおける8つのパーソナリティタイプ(各生徒の1位のタイプを希望進路別に集計)

※河合塾で作成。データは高校1年生春時点のもの

「エンジニア」は機械やものづくりが好きな技術的志向、「アナライザー」は数字やデータを扱い分析的に考えるのが好きな研究的志向が特徴です。これらのタイプは、行動特性にも違いがあり、「エンジニア」よりも「アナライザー」タイプの方が思考力も行動力も高いことが挙げられます。R-CAPのデータからは、こうした志向を持つ生徒が理系に進んでいる可能性がうかがえます。

興味・関心が固まるのは高校入学以前

今回分析したR-CAPのデータの受験時期を考えると、生徒たちは、高校入学前の時点ですでにある程度志向が固まっていることが推測されます。

現在、次期学習指導要領の高校数学、特に数学Ⅰでは、「数学ガイダンス(仮称)」を加えることなどが検討されていますが、高校入学後に理数的な分野への関心を喚起しても遅く、何か施策を打つのであれば、小中学校段階から行う方が効果的だと思います。

また、その場合にも、「エンジニア」や「アナライザー」タイプの志向を持った生徒を増やすことや、文系・理系問わずリテラシーのレベルの低い層を減らすことが重要であり、その生徒が文系か理系かは問題ではないでしょう。

たとえば、データを見たり分析したりすることがおもしろいということを児童・生徒の中に根づかせるために、理数科目以外の科目でも、数字を見ながら考えることや、数字を使って分析する機会を増やすことが考えられます。

社会や家庭などの授業の中でも、小中学校段階で数字を扱うことが当たり前のようになれば、生徒たちも違和感を持たなくなります。その結果として、データを見たり分析したりすることを楽しいと受け止めてくれれば、「エンジニア」「アナライザー」タイプが増えて、高校での文理分けで自然と理系希望者が増えてくると思います。

なお、R-CAPの結果を生徒たちにフィードバックする際は、1つのタイプに限定するのではなく、誰でも自分の中に8つのタイプを持っていて、そのうちどのタイプの比率が高いかということをグラフにして提供しています。すべてのタイプの比率を提供していますので、生徒の興味・関心が可視化でき、キャリア意識をさらに高めることができるようになっています。

▼生徒向け結果画面例はこちらから

高校生版 学びみらいPASS 生徒向け結果画面例にリンク

文理分けで大切なのは職業・学問の志向性

文理分けの際には、得意教科だけではなく、ジェネリックスキルや生徒の志向、職業適性、学問適性を考えることが大切です。

人の興味・価値観・志向というものは、時間が経過しても実はそれほど変わりません。いったんは理系と決めたとして、もともとR-CAPで文系的な志向性が強い生徒の場合、途中で“文転”をする可能性が高いこともわかっています。

“文転”や“理転”といった変更が許容できる仕組みになっていれば問題はありませんが、現状では課題が多く難しいと言わざるを得ません。そのため、文理選択をする前に、生徒が自身の興味・関心や適性を自覚する機会をどれだけ持たせられるかが大切になります。

こうした機会として、総合的な探究の時間は有効だと思います。それも一つのテーマに時間をかけて取り組むよりは、短いサイクルでいろいろなテーマに取り組む方が、生徒は自分の関心や興味がどこにあるかを見つけやすいと思います。

今回のテーマは楽しい、今回のテーマは自分には合わないなどの経験をすることで、自分はどのような社会課題に関心があるのか、何にやりがいを感じるのかを考える機会になります。これらはキャリアを考えるうえでも非常に重要なファクターとなるのです。


山口大輔(やまぐち・だいすけ)

学校法人河合塾 学校事業推進部 部長。河合塾入塾後、高校営業などを経て新規事業企画に従事。非認知能力や職業適性を測るアセスメントテスト『学びみらいPASS』や、決め方を学ぶ未来探究プログラム『ミライの選択』などの開発に携わる。近著に『どうする進路選択:やりたいことがない君も後悔しない進路は選べる』(Gakken)などがある。

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