大学入試の仕組みを理解しよう!共通テストについて理解しよう
共通テストの概要
日本最大規模の試験「共通テスト」
共通テストの正式名称は「大学入学共通テスト」で、各大学が独立行政法人「大学入試センター」と共同で実施する試験です。2020年度入試まで30年にわたり実施されてきた「大学入試センター試験(以下、センター試験)」の後継にあたる試験で、2021年度入試が初の実施となります。センター試験と同様、毎年1月中下旬の土・日曜の2日間に全国で一斉に実施される、日本最大規模の試験といえるでしょう。
※2021年度共通テストは、新型コロナウィルス感染症対策として、休校等による学業の遅れを理由に受験できる第2日程が設けられます。詳細は下記の解説記事をご参照ください。
国公立大学の一般選抜受験者は、原則共通テストを受験しなければなりません。また、多くの私立大学でも共通テストの成績を利用する「共通テスト利用方式」を設定しています。大学進学を考える受験生にとって、この共通テスト対策は必須といっても過言ではありません。
- どうして共通テストになるの?~高大接続改革とその背景~
- センター試験から共通テストへの移行は、「大学入試改革」の目玉です。「大学入試改革」は、国が進める「高大接続改革」のひとつです。国が改革を進める背景には、将来に対する強い危機感があります。現在の高校生や小・中学生が社会に出て活躍する頃には、現代社会は大きく変化している可能性があり、情報化社会の進展や急速に進む少子高齢化、グローバル化といった変動により、今の私たちには想像できないような形に変わっているかもしれません。こうした変革期を迎えるなかで、自ら問題を発見し、他者と協力して解決していくための資質や能力を育む必要がある、というのが改革のベースになっています。求められる資質や能力を育み評価するために、「高校教育」「大学教育」それをつなぐ「大学入試」を三位一体で改革しようとしているのです。
これら三位一体の改革のなかで、「大学入試改革」では、これまで以上に多面的・総合的に能力を評価する入試への転換が掲げられています。具体的には、学力の3要素と呼ばれる「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を入試でバランスよく評価することが求められています。これまでの大学入試では、入試の代名詞ともいえるセンター試験を中心に長年「知識・技能」の評価に重きを置いたテストが実施されてきました。2021年度以降の入試では、知識を前提にそれを活用する「思考力・判断力・表現力」を一層重視した評価をするために、センター試験を廃止し、共通テストへ移行します。共通テストでは、従来のセンター試験からの良問は引き継ぎつつも、試験の目的に沿って作問や出題形式が見直されます。
出題はマーク式、基礎的な内容から思考力・判断力を問う内容まで幅広く出題
共通テストは、センター試験における良問の蓄積を受け継ぎつつ、知識の理解の質を問う問題や、思考力、判断力、表現力を発揮して解くことが求められる問題を重視して作問されます。具体的には、授業において生徒が学習する場面や、日常生活の中から課題を発見し解決方法を構想する場面、複数の資料やデータ等をもとに考察する場面など、「どのように学ぶか」を踏まえた問題の場面設定が重視されます。また、これまでに身に付けた知識の理解や思考力を発揮できるかを問うために「教科書で扱われていない初見の資料等」を扱うことも想定されます。
共通テストの解答形式は、センター試験同様に「マーク式」のみですが、「解答が前問の解答と連動して正答の組み合わせが複数ある問題(連動型問題)」や「複数の解答を含んだ選択肢を用意する問題」など、新しい形式のものが出題される見込みです。
出題科目は6教科30科目
共通テストの出題科目は、国語・地理歴史・公民・数学・理科・外国語の6教科30科目で構成されます。この中から、最大8科目(理科①を選択した場合は9科目)を受験できます。受験生は、志望大学が指定する教科・科目を選択して受験することになります。 それぞれの試験時間帯で受験できる科目は、地理歴史・公民と理科は最大2科目(理科①を選択した場合は3科目)、そのほかの教科は1科目となっています。
教科 | 科目 | 配点 | 試験時間 | 選択方法 | |
---|---|---|---|---|---|
国語 | 『国語』 | 200点 | 80分 | ||
地理歴史 | 「世界史A」「世界史B」 「日本史A」「日本史B」 「地理A」「地理B」 |
1科目 100点 2科目 200点 |
1科目選択 60分 2科目選択 130分 (うち解答時間120分) |
10科目から最大2科目を選択解答する(同一名称を含む科目の組合せは不可) 受験科目数は出願時に申請 |
|
公民 | 「現代社会」「倫理」「政治・経済」 『倫理,政治・経済』 |
||||
数学 | ① | 「数学Ⅰ」『数学Ⅰ・数学A』 | 100点 | 70分 | 2科目から1科目を選択解答する |
② | 「数学Ⅱ」『数学Ⅱ・数学B』 『簿記・会計』『情報関係基礎』 |
100点 | 60分 | 4科目から1科目を選択解答する | |
理科 | ① | 「物理基礎」 「化学基礎」 「生物基礎」 「地学基礎」 |
2科目 100点 |
2科目選択 60分 |
8科目から下記のいずれかの選択方法により科目を選択解答する A 理科①から2科目 B 理科②から1科目 C 理科①から2科目及び理科②から1科目(同一名称を含む科目の組合せも可) D 理科②から2科目 選択方法は出願時に申請 |
② | 「物理」 「化学」 「生物」 「地学」 |
1科目 100点 2科目 200点 |
1科目選択 60分 2科目選択 130分 (うち解答時間120分) |
||
外国語 | 『英語(リーディング、リスニング)』 | 各100点 計200点 |
英語 リーディング80分 リスニング60分 その他 80分 |
5科目から1科目を選択解答する | |
『ドイツ語』『フランス語』 『中国語』『韓国語』 |
200点 |
- 「国語」は「国語総合」の内容を出題範囲とし、近代以降の文章(100点)、古典(古文50点、漢文50点)を出題
- 「地理歴史および公民」「理科②」の2科目選択者の試験は、解答順に第1解答科目・第2解答科目に区分し、各60分で実施する。試験時間130分には第1・第2解答科目間の答案回収等の時間10分を含む
- 「英語リスニング」の解答時間は30分、試験時間60分には機器の動作確認等の30分を含む
「数学」では、数学①(数学Ⅰ、数学Ⅰ・数学A)の試験時間は70分と、数学②(数学Ⅱ、数学Ⅱ・数学Bなど)と比べて10分長くなります。数学①では数学的な問題解決課程を重視するとしており、そのための「考える時間」を考慮した時間設定となっています。
外国語の「英語」の受験者は、「リーディング(センター試験時の「筆記」から改称)」と別時間に実施される「リスニング」の受験が必須となっています。共通テストでは、「リーディング」と「リスニング」の配点がそれぞれ100点となり、センター試験時と比べて「リスニング」の配点比重が高くなることが大きな特徴です。ただし、各大学が成績を利用する際には、配点比率を自由に決めることができるため、センター試験時と同じ4:1の比率を維持する大学や、共通テストの配点通り1:1の比率とする大学など、対応は分かれています。
国公立大 共通テスト英語 リーディング・リスニング配点比一覧
なお、共通テストでは出願や受験の際に注意すべき点があります。これらについて確認してみましょう。
出願・受験時に気を付けたいこと
どの科目を受験すればよいの?
共通テストでどの科目を受験すればよいのか? これはみなさんが受験する大学によります。合否判定に用いる共通テストの教科数や指定教科(科目)は大学により異なるのです。
受験に必要な教科数は、国公立大学では多くの大学が5教科以上、私立大学の共通テスト利用方式では2~3教科が一般的です。指定教科(科目)も、大学により異なりますが、理科や地理歴史・公民などは受験生の勉強科目に応じて受験できるよう複数科目から自由に選択できる場合が多くなっています。ただし、学部・学科の性質上、特定科目を必須とするケースも見られます。
科目選択時に注意しなければならない科目は、「英語以外の外国語」「数学Ⅰ」「数学Ⅱ」「簿記・会計」「情報関係基礎」「地歴A(世界史A・日本史A・地理A)」です。これらを出題科目として指定しない大学が多く見られるためです。また、公民の「現代社会」「倫理」「政治・経済」も、旧帝大などの難関大学では受験できないケースが見られる科目です。
なお、前述のうち数学②の「簿記・会計」「情報関係基礎」は、受験科目として指定されていても、「高等学校においてこれらの科目を履修した者のみ選択可能」といった制限が設けられている場合が多々見られます。
とくに注意が必要な理科の選択方法
理科についてはとくに注意が必要です。受験科目は共通テスト当日に問題を見てから決めることもできますが、A~Dのどのパターンで受験するかについては出願時に申請する必要があります。国公立大学の理系学部では、理科①を認める大学はほとんど見られません。また、理科を2科目必要とする大学も多いですから、国公立大学の理系学部を志望するならDパターン、つまり理科②を2科目選択しておくべきでしょう。一方、国公立大学文系学部では、理科①2科目または理科②1科目で受験できる大学がほとんどです。ただし、東京大学や京都大学などのように、理科①、理科②のいずれを選択した場合も2科目を必要とする大学があります。このため、Aパターン、つまり理科①2科目を選択しておくべきでしょう。私立大学に関してもやはり、理系は理科②、文系は理科①と考えておけばよいでしょう。

- *大学によっては「物理基礎」と「物理」のように同一名称を含む科目での受験を認めていない場合がある
第1解答科目指定とは?
地理歴史・公民、理科②において、教科内で1科目のみを合否判定に利用する大学では、2科目受験した受験生の成績は高得点の科目ではなく、第1解答科目(理科②、地理歴史・公民で1科目めに受験した科目)を指定するケースがあります。
とくに、国公立大学では多くの大学が第1解答科目を利用するほか、私立大学でも難関大学を中心に第1解答科目を利用します。どの順番で解答するかは共通テスト当日に自由に選べるため、得意科目を第1解答科目で解くのが基本です。ただし、なかには特定の科目を第1解答科目に指定する大学もあります。志望校が特定の科目を設定している場合は、それに従って受験しなければなりません。志望校の利用方法について確認しておきましょう。
大学 | 地歴・公民 | 理科② | ||
---|---|---|---|---|
第1解答科目 | 高得点科目 | 第1解答科目 | 高得点科目 | |
北海道 | ◯ | - | - | |
東北 | ◯ | ◯ | ||
東京 | ◯ | - | - | |
東京工業 | ◯ | - | - | |
一橋 | ◯ | ◯ | ||
名古屋 | ◯ | ◯ | ||
京都 | ◯ | ◯ | ||
大阪 | ◯* | ◯ | ||
神戸 | ◯ | ◯ | ||
九州 | ◯ | ◯ |
- *大阪大学経済学部は地歴を第1解答科目に指定
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