2025年度入試を振り返る国公立大の入試結果分析
公立大と準難関・地域拠点大で志願者増
国公立大の志願動向をみると、国公立大入試の中心である前期日程では志願者・合格者数とも前年から大きな変化はみられませんでしたが、公立大に注目すると志願者増が目立ちました<図表3>。同じく公立大が実施する中期日程も志願者が増加しました。今春は共通テスト5~7科目で受験可能な大学で志願者の増加が目立っており、得点できなかった教科があっても積極的に国公立大に挑戦する受験生の姿がうかがえました。なお、後期の合格者減は後期日程の廃止・縮小によるものです。
地区別にみると、首都圏~中国・四国の広範囲で志願者の増加が目立ちました。なかでも首都圏、近畿地区は4年連続で志願者が増加しており、都市部の国公立大の人気が高まっています。
準難関・地域拠点大で難化、ただし数年単位でみれば易化
国公立大を難関10大、準難関大・地域拠点大、その他の3つのグループにわけると、難関10大の志願者数、合格者数に昨年から大きな変化はありません<図表4>。ただし、今春の特徴は東京大、東京科学大、一橋大の首都圏3大学の志願者がいずれも減少したことです。東京大は第1段階選抜の倍率が狭まったことが警戒されたようです。3大学とも共通テスト後に他大へ志望変更した受験生が例年以上に目立ちました。共通テストの平均点は上昇しており、「失敗」した受験生は多くなかったものと思われますが、国公立大・私立大ともに志望変更の選択肢が多い首都圏では、最後に安全策を取った受験生が多かったようです。一方、他地区ではそれぞれ頂点に立つ難関大の志願者は前年並みもしくは増加しており、難関大の人気は堅調でした。

- 河合塾調べ、前期日程で集計
- 難関10大:北海道大、東北大、東京大、東京科学大、一橋大、名古屋大、京都大、大阪大、神戸大、九州大
(東京科学大の2024年度以前の数値は東京工業大・東京医科歯科大の合計値で集計) - 準難関・地域拠点大学:筑波大、千葉大、東京都立大、横浜国立大、新潟大、金沢大、大阪公立大、岡山大、広島大、熊本大
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志願者が大きく増加したのは、準難関・地域拠点大学です。準難関・地域拠点大ではボーダーライン近辺の成績層だけでなく、成績上位層から下位層まで幅広い成績層で志願者が増加しました。一方で合格者数は前年とほぼ変わっていないため、倍率は0.3ポイント上昇、難関10大の倍率を上回りました。<図表5>は準難関・地域拠点大グループの受験者の成績層別合格率を昨年と比較したものです。いずれの成績層も合格率がダウンしていますが、とくに偏差値50~65未満の成績帯で合格率の低下が顕著です。
<図表6>は<図表5>のデータを5年前の2020年度と比較したものです。各グループの偏差値60未満の合格率は5年前と同じか、アップしていることがわかります。今春難化した準難関・地域拠点大も偏差値50未満で合格率が5%以上アップ、その他大グループも偏差値50未満で合格率が大きくアップしています。長期的には国公立大の合格率はアップの傾向にあり、「手が届く大学」になってきているのです。
学部系統別の状況-「情報」で志願者2割増
<図表7>は学部系統別の志願状況です。棒グラフの濃い色は学部系統を、その右側の薄い色は各系統内の特徴ある分野を抜粋しています。グラフ内の横線は、前期日程全体の前年比101%のラインを示しており、このラインより上なら人気、下なら不人気とみます。
文系は、「社会・国際」「法・政治」で前年比108%と志願者が増加しました。文系では志願者が減少した系統がないのも特徴です。理系では、「理学」系統で前年比108%と志願者が増加した一方で、「工」は前年並み、「農」は減少と、人気に差がみられました。ただ「農」のうち、近年人気が続く「獣医」では前年比106%と今春も志願者が増加しました。「医療」系では、「医」の減少が目立ちました。医学科の志願者が減少するのは5年ぶりです。
近年注目の情報系ですが、学際系「情報」では志願者が前年比123%と大幅に増加しました。「工学」系統の「通信・情報」で同108%、「理学」系統の「数学・数理情報」で同104%と、情報系は全体的に増加はしていますが、学際系「情報」で、圧倒的な増加率となりました。
「情報」分野には他系統から流入
毎年、共通テストリサーチ時に志望していた大学から志望変更する受験生が一定数います。その際、志望系統は変えず、同系統の別の大学に出願するのが一般的ですが、学部系統を変更するケースもみられます。
2025年度入試では工学系学部に出願した受験生の12%が、他系統から工学部に志望変更していました。工学系のほか、文・人文、医療系などは学部系統をまたがる志望変更は少ない系統です。一方、「総合・環境・情報・人間」学系では40%が他系統からの志望変更組でした。文理横断型の科目設定をしている大学も多くみられ、文系・理系問わず、流入しやすいことが要因でしょう。「情報」分野も同様で、今年は43%が他分野から流入しました。今春は他系統からの流入が多かったことも、「情報」分野の志願者増の要因の一つとみています。
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