2025年度入試を振り返る2026年度以降の入試の展望
国の高等教育改革により大学の再編が進む
文部科学省は現在、高等教育改革をすすめています。2040年の大学入学者は46万人と推計されていますが、大学の入学定員が現在の63万人のままだとすると、定員の73%しか充足しない計算になります。そのため、「規模」の適正化に向けて、大学の統合・廃止・学部の再編などが図られています。また、それによって失われる恐れのある高等教育の「アクセス」確保策を講じるとともに、人が減っても一人一人の能力を高めることで、高等教育・研究の「質」を維持・向上することが改革の目的です。
各審議会で議論が始まっており、とくに私立大に対しては、急激な少子化を見据えた大学経営の在り方、私立大学の役割を明確化して役割を果たしてくための具体的な方策などについて話し合われる予定です。
大学や大学入試にもすでに影響が出ています。私立大・短大では募集停止や統合が加速しています。また、入学定員を減らす大学もみられます。一方で、人材不足が指摘される理工農系、情報系学部では新設の動きが国公立大・私立大ともにみられます。
修学支援新制度が拡大、多子世帯は所得制限なし
2020年からスタートした高等教育の修学支援新制度は毎年のように拡大し、近年の大学進学率の上昇に大きく影響しています。この制度では給付型奨学金と授業料等減免の2つの支援があり、支援額は世帯年収に応じて変わります。2025年度からは扶養する子どもの数が3人以上の多子世帯は、所得制限なしに授業料・入学金の免除が受けられるようになりました。
この奨学金・授業料等の減免は進学後の成績が基準を満たさないと、支援が打ち切りとなることもあります。学業成績が著しく不良である場合は、給付金の返還が求められるケースもあるとされています。
変化の時代の中で誕生する新たな学部
社会からのニーズ・受験生からの人気がともに高まっている情報系の学部は、2026年度も新設や定員増が続きます。山口大では工学部知能情報工学科を改組し、情報学部が設置されます。私立大でも、東京理科大が情報系分野を再統合し創域情報学部を設置するほか、複数の大学で新設を予定しています。
そのほかにも、特色のある学部が新設されます。国立大では、佐賀大でユニークなコスメティックサイエンス学環が新設されます。熊本大に設置される共創学環は、社会の課題を解決する人材育成を目的とした文理融合の教育組織です。公立大では旭川市立大・福井県立大・長野大で地域や社会を牽引できる人材を養成する地域系の学部が新設されます。私立大では、立教大に文理融合の新学部として環境学部が設置されます。そのほか、京都産業大でアントレプレナーシップ学環、立命館大ではデザイン・アート学部などの新設が予定されています。
国公立大では科目負担軽減・後期日程廃止の動きも
国公立大では、来春は2次試験の科目を見直す大学が多く、科目の負担を減らす大学が目立っています。関東地区では茨城大の動きが大きく、前期日程の工学部物質科学工学科・農学部でそれぞれ理科を廃止、後期日程では理学部の数学・情報数理コースを除く全コースで学科試験の実施を取りやめます。近畿地区では兵庫県立大の工学部が改組とともに科目を減らします。前期・後期ともに理科を1科目のみにし、前期日程では英語も減らします。九州地区でも動きが盛んです。熊本大の文学部では前期の小論文を廃止します。負担が減ることで志望者が集まることもあるため、今後の志望動向に注意が必要です。
また、後期日程を廃止する大学も多いです。旭川医科大・山形大・佐賀大では医学科の後期日程が廃止となります。医学科では後期日程を実施する大学がすでに少なくなっており、近隣の大学を中心に志望動向に影響が出るとみられます。
2026年度入試の展望
来春の18歳人口は今春並みのため、大学志願者数も今春並みを見込んでいます。大学側の動きでは国策により、私立大を中心に学部再編、入学定員減などの動きが加速しそうです。新課程2年目となり、切り替わりは本格化します。今春は比較的易しい問題で平均点が高かった共通テストの「情報」も2年目は難化するかもしれません。また出題傾向が変わった「国語」など、今春の傾向が継続するとは限りません。模試や過去問を利用し、幅広い対策が必要でしょう。各大学の個別試験も数学の範囲など、2026年度からは旧課程生への配慮がなくなり、新課程から加わった分野が本格的に出題されるでしょう。
皆さんが進学しようとしている大学は、今後数年で大きく変わろうとしています。入学定員減や学部の再編といった個別の大学の動きのほか、これから明らかになる認証評価制度や情報公表の変更にも注目したいところです。入試が目前に迫ってくると、どうしても目先の合格に目が行ってしまいますが、進学後・大学卒業後の「自分」を見据えた大学・学部選びを丁寧に行うことが大切です。
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