- 2026年06月29日
2027年度入試の展望学部・学科の新設続く
定員の変化にも注意を
国策により進む教育改革ー理工・デジタル人材育成促進へ
この春財務省が公表した私立大削減案を契機に、大学の「縮小と再編」があらためて注目されています。文部科学省が公表した「高校から大学・大学院等を通した人材育成システム改革ビジョン」は、今後不足するのは理工・デジタル分野の現場で働く人材であるとし、高校から大学・大学院、さらに社会人の学び直しまでを一貫してつなぐ形で、教育改革を進めるとしています。
具体的な数値目標も示されています。2040年までに大学定員のおよそ半分を理工農・デジタル・保健系とすること、高専の学生数を増やすこと、高校では専門高校の機能強化に加え、普通科における文系・理系の比率を同程度にすることなどです。
現在、大学入学者数は約63万人ですが、18歳人口の減少により、2040年には約46万人に減ると想定されています。それに合わせて入学定員の縮小とともに学部の構成比の転換(人文・社会系から理工系へのシフト)を進めようとしています <図表1>。
すでに私立大を中心に変化が起きています。人文系や家政系は定員の縮小が続いています。一方で理系へのシフトが進んでおり、文系色の強かった大学が情報系や理工系の学部を新設する動きが増えています。
2027年度は文理融合やトレンドワードを含む学部・学環などの新設が続く
国の方針も踏まえて、新学部・学環の設置の動きは2027年度も続きます<図表2>。国公立大では、トレンドワードを含む学部・学環の新設が見られます。信州大ではサステナブル社会協創学環が新設されます。既存の学部と連携し、人・自然・社会の3領域を横断して学ぶ文理融合型の新しい教育課程としています。熊本県立大では半導体学部が新設されます。国内外の半導体メーカーが進出する熊本県において、国の支援を受けて半導体人材の育成をめざす学部です。
私立大でも理系学部の新設が盛んです。首都圏や近畿圏の大規模な大学で新設・改組が相次ぐほか、情報系学部の新設も全国の複数の大学で予定されています。
国公立大
- 東京大(UTokyo College of Design)
- 信州大(サステナブル社会協創)
- 福山市立大(情報工)
- 熊本県立大(半導体)
- 宮崎公立大(人文-国際情報)
*東北大(ゲートウェイカレッジ)
私立大
- 青山学院大(統計データサイエンス)
- 中央大(スポーツ情報)
- 東洋大(環境イノベーション)
- 愛知大(社会情報)
- 龍谷大(環境サステナビリティ、情報)
など
このほか、既存の学部とは大きく異なる学部や教育プログラムを開設する大学が注目されます。東京大では、約70年ぶりとなる新学部UTokyo College of Designが誕生します。学士・修士一貫の5年プログラムで、2027年9月に開設予定です。東北大では「ゲートウェイカレッジ」という特別教育プログラムを創設します。入学時点では学部を決めず、2年間の基礎教育を経たうえで3年次以降に専門分野に所属するとしています。入試は4月入学・10月入学の2回で、総合型選抜で実施されます。
東京大・東北大ともに定員の約半数を留学生とすることを想定しており、講義は英語で行われます。初年次は寮生活を必須としており、日本国内にいながら国際的な環境の中で学べる点も特徴です。
国公立大では定員変更や入試科目の変更に注意
国公立大では入学定員や一般選抜の募集人員を大きく変更する大学があります。東京大では新学部設置に伴い、既存の全科類の一般選抜において100名(約3%)募集人員を減らします。新たに学校推薦型選抜を実施する九州大(工)では、各選抜の募集人員が大きく変わります。特に後期日程は募集人員が20名となり、前年から82名減少します。難関大志望者の後期日程選択に影響があると見られます。このほかにも後期日程を縮小する大学が複数あります。
<図表3>は入試科目に変更がある主な大学です。理工系を中心に、二次試験の入試科目負担を減らす大学が見られます。横浜市立大(データサイエンス)では、学科試験と総合問題の両方が課されていましたが、総合問題の実施を取りやめます。受験生にとっては対策が立てやすくなったといえます。なお、科目負担が減ると、志願者が集まりやすくなる傾向があるため注意が必要です。
一方、科目負担が増える大学も一部あります。旭川医科大(医ー医)では二次試験で理科2科目が追加されます。そのほか、二次試験を小論文や総合問題などから学科試験に変更するケースと、その逆のケースがみられます。必要な対策が大きく異なる場合もあるため、各大学の変更点には注意が必要です。
入試科目の負担が減る大学
- 宮城大(食産業):前期
- 埼玉大(工-応用化学):前期
- 横浜市立大(データサイエンス):前期
- 兵庫県立大(社会情報科学):中期
- 大分大(理工):前期
二次:英・数・理 → 英(数学・理科減)
二次:小・総 → 小(総合問題減)
二次:英・数・総 → 英・数学(総合問題減)
二次:英・数 → 数学(英語減)
二次:数・理 → 数(理科減)
入試科目の負担が増える大学
- 旭川医科大(医-医):前期
- 鳴門教育大(学校教育-小中-理科・技術):前期
- 佐賀大(経済):前期
二次:英・数・面 → 英・数・理科・面(理科2科目増)
二次:面 → 小・面(小論文増)
共テ:5教科6科目 → 6教科7科目(理科増)
2027年度入試の展望
来春の大学志願者数も前年並みの見込みです。一方、大学側では特に私立大で統合・募集停止といった動きが出てくる可能性があります。定員減や年内入試へのシフトにより、一般選抜の募集人員が大きく減少する大学も出てきそうです。
また、公募制の総合型・学校推薦型選抜では、2027年度入試から「面接の実施」を必須とするルールが課されます。2026年度入試で面接を課していなかった選抜区分については、2年間の経過措置を認められていますが、前年から選抜方法を変更する大学が出てくる可能性があります。
共通テストは新課程移行後3年目となります。出題傾向も固まりつつあり、見通しが立てやすくなっています。私立大専願の受験生も共通テストを受験することで、選択肢が広がります。受験機会を増やすという意味でも、共通テストの受験を検討するとよいでしょう。
入試の動向では、国公立大では全体の志願者数は前年と大きく変わらないとみています。ただし、個々の大学・募集区分では「隔年現象」に注意が必要です。特に今春入試で倍率が2倍を下回った募集区分は要注意です。
直近の数字だけで判断せず、少なくとも過去3年分の入試結果を確認することをおすすめします。また、後期日程は例年欠席者が6割以上出ています。最初からあきらめてしまうことなく、出願の可能性を丁寧に検討することが重要です。
私立大では今春延べ志願者数が大幅に増加しました。背景には、一人当たりの出願校数の増加があります。入学する大学は1つです。出願校を増やすことは費用面だけでなく、受験生本人の負担も増えます。また、合格だけを目的とした併願は不満が残りがちです。併願校は入学してもよい大学なのか、十分に考えることが必要です。
- 関連コンテンツ
-
- 進学情報誌Guideline 2026年4・5月号(電子書籍版)
-
進学情報誌「Guideline(ガイドライン)」では、最新の入試動向はもちろん、広く教育界に関わる動きなど進路指導のための情報をお届けしています。


