公共,倫理

共通テストに向けてどのような学習を行えばよいのか、河合塾講師からの学習アドバイスをご紹介します。また、共通テストの設問別分析や平均点の推移などをまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

河合塾講師からの学習アドバイス

公共,倫理学習アドバイス

1.「公共」(政治・経済分野)の対策も万全に
2025年度の本試験では、「公共」から25点、「倫理」から75点がそれぞれ出題されました。2026年度においても、同様の出題割合となることが予想されます。「倫理」の対策に重きを置くことになるかもしれませんが、「公共」についても軽んじることなく対策をきちんと行わなければなりません。特に「公共」の政治や経済に関わる学習事項は、範囲も広く分量も多いです。「公共」は、「倫理」に比べて大まかな学習で構いませんが、基本事項を習得し、科目の全体像をつかむくらいに仕上げておくことは不可欠です。
2.知識事項の習得および定着
共通テストで目標の得点を獲得するためには、知識事項の習得は欠かせません。そのために、教科書の精読を継続しましょう。また、知識事項をしっかりと定着させる際に有効なのが問題演習です。受験勉強の初期段階においては、教科書を単元ごとに読み進めるとともに、それに並行して演習できる問題集(単元別あるいは分野別に編成された問題集、基礎問題集)を使うとよいでしょう。
3.共通テスト型の問題を活用して思考力・判断力を磨く
2025年度の共通テスト本試験の問題を早い時期に見ておきましょう。実際の問題内容や形式を把握し、それらを踏まえてその後の学習計画を立てることが望ましいです。旧試験科目「倫理」の過去問も研究しておくべきです。また、旧試験科目の「現代社会」の過去問についても目を通しておくことが望ましいです。なぜなら、「これは『公共,倫理』でも出題されそうだな」と思うような問題が多いからです。併せて、全統模試の問題を活用して、共通テスト本番で必要となる思考力や判断力を磨きましょう。
4.キーワードの暗記に走らず内容理解に徹する
「エピクロスは、『水と一切れのパンがあれば足りる』と語り、肉体と精神のあらゆる快楽を最小限に抑えることによって、自足した賢者の理想をめざす生活を唱えた」という記述例を用いて考えてみましょう。「『水と一切れのパンがあれば足りる』=エピクロス」と丸暗記型の学習をした受験生にとっては正文に見えるかもしれませんが、この記述例は誤文です。エピクロスの快楽主義が理解できていれば、「快楽を最小限に抑えることによって」という部分が不適当であると判断できるはずです。
共通テストの問題のほとんどは、内容理解を伴わない丸暗記型の学習では対応できないつくりとなっています。キーワードだけ覚えて済ませてしまうような丸暗記型の学習は避けましょう。教科書の記述を丁寧に読むこと、そして問題演習で間違えた箇所をすぐに教科書でチェックするなど、理解を深めるための学習を積み重ねていくことが重要です。

2025年度共通テスト「公共,倫理」問題構成と設問別分析

問題構成

大問 分野 配点 マーク数
1 男女共同参画社会をめぐる現状と課題(公共) 12 4
2 公共空間の持続的形成(公共) 13 4
3 源流思想と西洋思想(倫理) 28 9
4 日本思想(倫理) 15 5
5 認知の心理学(倫理) 16 6
6 現代社会の諸課題(倫理) 16 5
合計 100 33
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設問別分析

第1問
「公共」の授業での探究活動という場面設定のもと、日本の男女平等に関する法的状況に関する問題、示された資料や会話文の内容を読み取る力を試す問題、形式的平等と実質的平等およびアイヌ施策推進法(アイヌ民族支援法)に関する問題が出題された。問1や問4のような問題に対応するためには、基本知識の習得が不可欠である。問2や問3のような問題に対応するためには、表やグラフといった数値資料を読み取る練習を積み重ねておくことが有効である。※公共第1問と共通問題。
第2問
生徒が公共空間の持続的形成に関する課題探究を行うという場面設定のもと、ハーバーマスやアーレントに関する知識が問われた問題、二つの表の内容を読み取る問題、帰納的に推論されている発言を判断する問題、対面と非対面という点に着目して作成されたメモを踏まえて事例を判断する問題が出題された。問1のような問題に対応するためには教科書を通じた知識事項の習得が、問2のような問題に対応するためには表やグラフといった数値資料を読み取る練習が、それぞれ重要となる。問3や問4のような問題に対応するためには、多面的・多角的に考察する力を高めるよう普段の学習から意識しておくことが求められる。※公共第4問と共通問題。
第3問
芸術をテーマに、源流思想や西洋思想の分野から幅広く出題された。問2はイスラームにおけるミフラーブについて、問5は『維摩経』の内容や唯識思想と玄奘の関係について、踏み込んだ知識を求めており、受験生には厳しかっただろう。ガリレイやコペルニクスなどを取り上げた問6の空欄補充問題はかなり易しい。問7と問8は資料文の読み取り問題であり、丁寧に読めば対応できる。
第4問
日本における外来思想の受容と展開をテーマとする会話文をもとに、仏教の受容と本地垂迹説、垂加神道、復古神道、親鸞、伊藤仁斎、本居宣長、富永仲基、佐久間象山、夏目漱石、内村鑑三らの思想が取り上げられた。資料文は、西村茂樹『日本道徳論』が用いられた。日本文化の「雑居」性を説いた丸山真男と、「雑種」性を説いた加藤周一を区別させる問5の問題はやや細かい知識を問うものであった。
第5問
生徒の会話をもとに、認知の心理学に関する分野から出題された。問1は検索と符号化について、問3はメタ認知とヒューリスティックについて、いずれも心理学用語についての知識が問われている。問2・問4・問5はバイアスに関する問題であり、特に問5は試作問題で出題された連動式問題となっている。いずれも落ち着いて解答すれば難しい問題ではない。
第6問
戦争と平和というテーマで、現代のヒューマニズムを中心に出題された。問1のトルストイ、問2のフーコー、問3のストア派に関する知識は標準的なものであった。問5の非暴力主義に関する文章・資料読解問題については、分量はやや多めであったが内容については難しいものではなく、正解は導きやすいものであっただろう。

共通テスト「公共,倫理」平均点の推移

年度 2025年度 2024年度 2023年度 2022年度 2021年度
平均点 59.74 56.44 59.02 63.29 71.96
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